フィリピン 2016年8月10日

フィリピン・ドゥテルテ新大統領の信任率が急上昇!
麻薬容疑者の大量射殺を国民は評価

 先日、ルソン島中部、ヌエバエシアにお住まいの退職者の方から、妻の誕生日のケーキを買うために市内に出かけたら田舎道で大渋滞にあったという話を聞いた。

 渋滞の原因は、麻薬密売人が警察によって路上で射殺され、その現場検証が行なわれていたからだ。しかも驚いたことに帰りの道も別の現場検証で大渋滞で、1日に2回も射殺現場に遭遇したとのこと。近所でも同様な事件があって、いったい世の中どうなっているのかとびっくりしたが、フィリピン人の妻は「普通のこと」と平然としていたという。

 実際、現地の新聞は連日のように麻薬密売人の射殺を報じている。「麻薬事件の容疑者殺害 1週間で新たに31人 大統領選以降は計103人に」(7月8日)、「大統領就任以降 首都圏で69人殺害 違法薬物密売容疑で」(7月19日)など、全国的に麻薬密売人の殺害が広がっており、「他に552人が逮捕され、約1万8000人が出頭した」(7月19日)とも報じられている。

 ドゥテルテ大統領は6カ月以内に違法薬物を撲滅すると宣言しているが、十分達成しそうな勢いだ。

 ドゥテルテ大統領はダバオ市長時代、処刑団を率いてダバオの治安を劇的に改善したといわれており、同じ手法をフィリピン全土で展開しているようだ。

 これまでフィリピンの警察は、いったい庶民の味方なのか、犯罪組織の味方なのかわからず、警察官自体が犯罪を主導することもあったが、今回は「警察は正義の味方」と明確に示そうとしており、そのためには、現職警察官であっても容赦しないのだろう。

 私の知り合いの国家警察幹部は善良な正義派だが、かつてこうぼやいていたことがある。

 「警官が容疑者を射殺すると、その射殺が正当だったかどうかをめぐって、一転して警官自身が殺人容疑者になってしまうことがある。そのため事前に発砲を予告するなど、射殺を正当化するさまざまな手続きが必要だ。だがそんな悠長なことをやっていれば、犯人が逃走するか、あるいは自分がやられてしまう。瞬時の判断と対応が警察官自身の命を守るためにも必要なのだ」

 ドゥテルテ大統領、そして大統領に指名されたデラ・ロサ国家警察長官が、「抵抗したら躊躇なく射殺せよ」との大号令を発したことが、こんな警察官のジレンマが払拭したにちがいない。

 しかしロブレド副大統領は、この状況を「超法規殺人」として強く非難している。フリピンでは大統領と副大統領は別々の選挙で選出され、現在の副大統領はノイノイ・アキノ前大統領と近く、ドゥテルテ大統領にとっては政敵といっても過言ではない。

前大統領に近いされるロブレド副大統領(左)とドゥテルテ大統領

 ともあれ、「フィリピンのダーティーハリー」とも呼ばれるこわもての大統領の登場で、全国の警察官は麻薬容疑者の射殺に躊躇しなくなった。これにはフィリピンの刑務所が満杯で、逮捕しても収容先がないという事情もあるようだ。

 一方、追われる立場としてはこれではたまらず、1万8000人もの麻薬密売人が続々と自首してきた。このニュースに、フィリピンはこれほどまでに麻薬がはびこっていたのかと驚いたのは私だけではあるまい。

 確かにこの国では、シャブ(覚醒剤)がらみの事件をよく耳にする。最近では人気俳優のジェリコが「若いときシャブをやっていた」と告白したそうだ。ジェリコは魚の行商をしていたときにスカウトされたというから、若者たちのあいだでもシャブの蔓延は深刻なようだ。

 だがいまでは、その彼らも殺されないうちに麻薬から手を洗おうと必死になっているのだ。

知人のジェーンが人気男優のジェリコ(右)と記念撮影【撮影/志賀和民】


【参考記事】
●フィリピン大統領選がいよいよ佳境に
「孤児」から「ダーティハリー」まで、超個性的な有力候補者たち

●フィリピン大統領はどのように選ばれるのか?
意外とたいへんなフィリピンの選挙

(文・撮影/志賀和民)

著者紹介:志賀和民(しが・かずたみ)
東京出身。東北大学大学院修了後、日揮(株)入社。シンガポールをかわきりに海外勤務を歴任。1989年日揮関連会社社長に就任しフィリピンに移住。2007年4月PASCO(サロン・デ・パスコ)取締役。

 


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