世界のバッテリー産業と自動車産業で今、注目されている企業がある。

 その名は、SB LiMotive。「SB」の「S」は韓国サムスンSDI、「B」は独ボッシュ。そして「Li」はリチウムイオン二次電池、「Motive」は自動車用を意味する。

 サムスングループは、言わずと知れた韓国の大手電機メーカー。小型パソコンや携帯電話で普及したリチウムイオン二次電池で、世界シェアトップの三洋電機(パナソニックグループ)を、価格競争力を武器に猛追している。一方のボッシュは、ドイツ自動車産業で中心的役割を果たす総合部品メーカーである。

トヨタの電気自動車戦略に見え隠れする<br />独BMWの事業展開手法SB LiMotive製のPHEV(プラグインハイブリッド車)用電池パック。容量は約7kwh。

 この強者連合の合弁事業であるSB LiMotiveは、「セル」と呼ばれるリチウムイオン二次電池の単体を韓国内で開発・生産し、温度管理などを目的とする制御基盤を組み込んだ「モジュール化」、さらに車両搭載を考慮した数個のモジュールを組み合わせる「電池パック化」をドイツ国内で行っている。

 高い技術開発力と世界にリーチできる強力な営業力を兼ね備えているのだから、その動向を、日系自動車メーカーと関係が深い日系バッテリーメーカーあるいは大型政府補助金に頼る米系バッテリーメーカーが注視するのも当然と言える。

 実はSB LiMotiveはすでに、BMWが2013年から量産する電気自動車「メガシティビークル」向けの角型「セル」の供給契約を結んでいる。

 2010年10月19~21日にドイツ・ミュンヘン市ニューメンメッセで開催された電気自動車のフォーラムと展示会である「eCarTec」ではPHEV(プラグインハイブリッド車)向けの容量約7kwhの電池パックを世界初公開した。

 同フォーラムを訪れた筆者は、SB LiMotive関係者から、「ホンダを含めた日系企業とも(PHEV用の製品)供給に向けた交渉をしている」との話を聞いた。