10月31日はハロウィーン。ここ米国では子供たちが近所の家を歩き回って、お菓子をおねだりする日だ。

 この季節になると、混み合うのがハンドメイド(手作りの)雑貨を売るクラフトショップである。布地やボタンなどを販売している店だが、ハロウィーンが近づくと、可愛い子供たちの仮装衣装を手作りしようと、親たちが殺到する。もちろん、デパートや小売店でも魔女や悪魔、お姫様などハロウィーン用の衣装を売ってはいるが、誰にも負けない衣装を創ろうとすれば、クラフトシップ通いは欠かせない。

 アメリカ人は昔から日曜大工好きの国民として知られるが、トンネルの先が見えない不況が原因なのか、ここ数年その生来の自前主義にさらに拍車がかかっているようだ。手芸っぽいクラフトから家のリフォームといった大掛かりな大工仕事まで、アメリカ人は日曜大工の宣伝文句「DIY(Do It Yourself)」のとおり、つまり「なんでも自分でやろう」と考えるのである。

 そうした創作をサポートしたり、お互いに教え合ったりするサイトは、ネット上に数えきれないほどある。よく知られているのは、オライリー・メディアの『メイク』や『クラフト』というサイトだ。中でも『メイク』は毎年、全米各地で「メイカー・フェアー」と銘打ったイベントを開催しており、知名度は高い。今年はカリフォルニアで開催し、600人以上の出展者と8万人以上のファンが集まったという。

 しかし、こうしたハンドメイド・ブームに乗って、本当に儲けているサイトは別にある。今やアメリカのみならず、世界各地のハンドメイドの腕自慢たちが集い、自分たちの創作物を売るマーケットプレイスにまで昇華したエッツィー(Etsy)がそれだ。

 サイトを訪れると、アクセサリーにはじまり、スカーフや服の類い、かばんや靴、クッションなどのインテリア商品、花瓶や皿、置物など、デパートの店先では見かけないユニークな商品がドバっと目に入ってくる。

 仕組み自体は別に目新しいわけではない。楽天やアマゾンのように、個々人がエッツィーへ出店。エッツィーは1商品20セント(16円)の出店料と総売り上げの3.5%を徴収する。

 このエッツィ、着眼点の勝利と言えるだろう。個々人の創造物のマーケットプレイスを提供することは、人と人とを結びつけるソーシャルネットワークの時代にぴったり合うからだ。それは、数字が証明している。今年前半だけでエッツィー上の取引額はなんと1億7940万ドル(約143億5200万円)に達した。売買は世界170カ国にわたり、取引件数は毎日数万件にのぼるという。