今後4年間に渡って、各省庁の歳出予算を約20%カットする。49万人もの公務員を削減する。129の特殊法人を廃止する――ニュースを聞いて、一体なぜそんな荒療治ができるのかと驚いたのは、私だけだろうか。

 英国キャメロン保守党自民党連立政権が4年間でGDP比4~5%、810億ポンド(約10兆4490億円。1ポンド=129円換算)という戦後最大の歳出削減に乗り出す。一方で、増税を中心にGDP比1.6%、290億ポンド(約3兆7400億円)歳入も増加させる。

 この合計1100億ポンド(約14兆1900億円)に上る財政健全化措置によって、2015年に公的部門(一般政府+公的企業)の構造的経常収支(後述)を黒字化し、2010年度GDP比で10.1%まで拡大した財政赤字を1.1%まで縮小しようというのである。英国のGDPは約1兆4000億ポンド(約181兆円)だから、4年間で9%に当たる1260億ポンド(約16兆2540億円)もの財政収支の改善を行うということになる。

 簡単に、英国の予算構造を説明しておこう。

 英国の歳出予算(2010年度6968億ポンド=約90兆円)は、二種類の歳出予算からなっている。「省庁別歳出限度額」(DEL=Departmental Expenditure Limits。3943億ポンド=約51兆円)と「各年管理歳出」(AME=Annually Managed Expenditure。3024億ポンド=約39兆円)である。

 DELは、裁量的に制御可能である省庁別の歳出予算で、3年間(今回の改革では4年間)の合計支出額が決定される。未消化分は次年度に繰り越してもいい。原則として毎年度の査定はない。

 AMEは、社会保障費や利払い費など裁量的に制御が難しい歳出であり、経済社会の変化に合わせて毎年度査定が行われる。

 ややこしいことに、DEL、AMEともに「経常的支出」と「資本的支出」にさらに二分される。公共事業やIT整備費用などが資本的支出に当たり、それ以外の経費的支出が経常的支出である。省庁別の人件費や各種の補助金、社会保障費や利払い費などからなるDELとAMEの経常支出合計(2010年度は6373億ポンド=約82兆円。総支出の9割)を、2015年にはその年の税収で賄えるようにする――これが前述した「公的部門の構造的経常収支の黒字化」という大目標である。