約291万票を獲得して、東京都知事選挙で圧勝した小池百合子氏。今後、都議会自民党や自民党本部に対して、対決姿勢を貫いていくのか。それとも、安定的な都政運営のために、妥協をすることになるのか。小池新知事の繰り出す次の一手や今後の自民党との関係について、都政にも精通する政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に話を聞いた。

選挙戦終盤には対自民党発言を
軟化させ始めた小池氏

 7月31日に行われた東京都知事選挙。衆議院議員を辞職し、都議会自民党との対決姿勢を表明した小池百合子氏が圧勝する結果となった。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、小池氏のスタンスは序盤と終盤では大きく変わっていたと分析している。

小池都知事vs自民党・第二幕の行方、敵対か協調か?鮮やかな選挙戦の手腕を見せつけて圧勝した小池百合子氏。かつて、小泉純一郎氏や小沢一郎氏など、有力政治家たちから学んだ手法を駆使したのだ
写真:日刊スポーツ/アフロ

「小池さんは、当初、自民党都連を『ブラックボックス』呼ばわりし、都議会の冒頭解散を訴えるなど、自民党への対決姿勢を強く見せて、無党派層の有権者の支持を掘り起こしていました。

「これはかつて『自民党をぶっ壊す』と叫んで、無党派層の喝采を浴びた小泉純一郎元総理を彷彿とさせるような手法でした」

「しかし、小池さんは、選挙戦の最終盤に差し掛かると『自民党と戦っているわけじゃなく、自民党都連の一部と戦っている』と発言するなど、徐々にトーンダウンしはじめます。また、それだけでなく、『東京はアベノミクスの牽引役になるべき』とも発言し、自民党本部や安倍官邸を敵視しているわけではない、と軌道修正していったわけです」

「小池さんは、自分が東京都知事選に出馬するにあたり、自民党の対応や、世論の動向を見据えながら、自らの戦い方や立ち位置をかなり綿密にシミュレーションしていました。都知事選挙が進み、手ごたえを感じ始めると、当選後のことも考えて、発言を抑え始めたのではないでしょうか」

 鈴木氏によると、官邸サイドは、都知事選挙の開票前から小池氏との手打ちを模索し始めていたという。

「じつは、安倍総理サイドは、小池さんの優勢が伝えられるのにあわせて、推薦する増田陣営の選挙戦に深入りするのを避けるようになっていきました。実際、安倍総理は、増田さんの応援のための街頭演説は一度もおこなっていません。映像による応援メッセージを寄せただけです」

「わたしの取材によれば、投開票日の3日前の7月28日の段階で、すでに投開票日の翌日に安倍総理と小池新知事の会合をセッティングしようとする動きが水面下であったことがわかっています。この動きは、小池さん側から『会談は初登庁の後にしてほしい』との要望があり、流れたようですが」

 実際に安倍総理と小池都知事の会談は、初登庁の2日後の8月4日に行われている。