前回前々回に述べたことをまとめると、つぎのとおりだ。

(1)支出に対するスペンディング・ウエイブ(支出予測の波)の存在は、あまりはっきりしない。とくに、団塊ジュニア世代は、2000年以降の期間において、住宅投資の増加をもたらさなかったようだ。

(2)国民経済計算における家計貯蓄率は、1981年の18%超から2008年の2.3%まで、顕著に下落した。ただし、これは、計算基準改定の影響も大きい。その半面で、家計調査ベースの家計貯蓄率(「黒字率」)は、下落はしているものの、国民経済計算の家計貯蓄率ほどの下落は示していない。

(3)高齢者ほどリスク資産需要が高まるかどうかは、判然としない。しかし、高齢者ほど資産の保有額が増えることは間違いない。

人口高齢化と家計の黒字率

 上の(2)で述べた家計調査ベースの貯蓄率(黒字率)をもう一度取り上げよう。

 この時系列的な推移は、【図表1】に示すとおりである。98年までは上昇していることに注意が必要だ。国民経済計算ベースの家計貯蓄率がこの間低下を続けていたのとは異なる傾向だ(注1)。ただし、98年以降は、黒字率も下落に転じている。

貯蓄率の変化が経済パフォーマンスに与える影響

 では、家計黒字率の変化は、人口の年齢構成の変化とどのような関係があるのだろうか?