23日に共同声明が発表された
チケットの高額転売問題

チケット転売、経済学的には主催者側に責任がある

 筆者は、大学で経済学を教えている。授業のネタには、もってこいの題材を見つけた。

 8月23日、一般社団法人日本音楽制作連盟(音制連)、日本音楽事業者協会(音事協)、コンサートプロモーターズ協会(ACPC)、コンピュータ・チケッティング協議会の4団体が「チケット高額転売取引問題の防止」を求める共同声明を発表した(http://www.tenbai-no.jp/)。その声明には、国内アーティスト116組の賛同が加えられていた。

 CDをはじめとする音楽ソフトの売上は減少傾向であるが、ライブやフェスなどは、音楽をリアルに体験できるとして入場者数は増加傾向になっている。有名なアーティストのコンサートはチケットを購入するのも至難の業であり、発売当日のネット予約には購入したい人が殺到する。

 その結果、コンサートによってはチケットを購入できない人も出てくる。そこで、ネット上でのチケット転売ビジネスが出てくる。かつてはダフ屋がやっていたことと似ているところもあるが、良心的な業者もいる。

 チケット転売での問題として、次のようなことが言われている。(1)チケットを買い占めて、転売して不当な利益を上げている、(2)チケット買い占めによってファンが正規料金で購入できない、(3)転売チケットを購入したファンが入場拒否される。

 そこで、冒頭のような「転売NO」という声が出てくる。転売防止のために、顔認証などのシステムが導入され始めている。

 こうした問題について、経済学ではどう考えるのだろうか。これが経済学授業のネタというわけだ。

「需要」と「供給」のバッテン図で
チケット転売の経済学を考える

 ジョークで「経済学者は需要と供給という言葉を覚えていればなんとかなる」というものがある。これはある意味で正しい。多くの経済問題への処方箋は、需要と供給の図(例のバッテンの図)を応用すれば、出てくるのは事実だ。