中国人にとって
スマホは「日常の財布」

中国のスマホ決済、急拡大に潜む危うさ

 中国でスマートフォン(以下スマホ)を使った電子決済サービスが急成長している。8月、中国最大の経済紙『経済参考報』は取引規模について、「年内にも10兆元(約160兆円)」とし、2018年には18兆元(約288兆円)になるだろうと見込みを伝えた。

 スマホを店頭のタブレットにかざして決済する支払い方法は上海でも普及している。上海の陸家嘴金融街に勤務する呉海燕さん(女性、仮名)は、毎朝出社前にコンビニに立ち寄るが、ここで財布は使わない。「朝ごはんの肉まんをレジに持って行ってスマホをかざすだけ」と呉さん。最近は路上の雑貨店でも使えるようになった。

 呉さんが使っているのは「支付宝(アリペイ)」。これはネット通販モールの淘宝網(タオバオ)を運営するアリババ集団が提供する第三者決済サービスだ。ネット通販の決済手段のひとつでもあり、利用登録者は約4.5億人に上る。

「外資系勤務のホワイトカラーなら何万元(数十万円に相当)もチャージしている」と呉さんが話すように、最近は20~30代を中心としたスマホユーザーの間で、「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」などを利用した支払いが当たり前になった。上海市在勤の男性会社員は「食事のときの面倒な割り勘もこれでやりとりするし、子どものお年玉もウィーチャットペイで渡す」という。

 常に手元のスマホをいじっている中国人にとって、スマホはすでに「日常の財布」に置き換えられたといっても過言ではない。

 アリペイが持つのは支払い機能だけにとどまらない。使わない金には利息がつくという“財テク機能”もある。

 呉さんは昨年、自分の銀行口座から預金の一部をアリペイに振り替えた。「1万元を預ければ1日で1元の利息がもらえた」とその当時を振り返る。今では金利も2%台に下がり、当時ほどの恩恵はなくなったものの「それでも銀行の金利よりマシ」と呉さんはこれを利用し続けている。