静かな時限爆弾
アスベストの恐怖

 アスベストは鉱物なのに繊維状という変わった物質で、その繊維は髪の毛の5000分の1ときわめて細い。耐久性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性などに優れ、しかも安価なため、「奇跡の鉱物」と呼ばれ、様々な製品に利用されてきた。

 ところが、アスベストを吸い込むと15~40年後に中皮腫という特殊ながんや、肺がんなどを発症させる場合があることが明らかになり、多数の被害者を出していることが判明。特に中皮腫は発症すると1~2年で亡くなる場合が多い。そのため一転して「静かな時限爆弾」と恐れられるようになった。

 日本でも中皮腫被害が増え続けており、2015年には1500人あまりの命を奪っている。

「夫は(1995年の)阪神・淡路大震災後約2ヵ月間だけ、アルバイトとしてがれき処理で働いて中皮腫になり、(発症から)1年後に亡くなりました」

 東京のNPO「東京労働安全衛生センター」が4月21日、熊本市内で開催したシンポジウム「震災とアスベスト」で、兵庫県宝塚市在住の延原タヨ子さん(72歳)が証言した。

 延原タヨ子さんの夫の清さんは、震災から15年後の2010年10月ごろに体調不良を感じて検査を受け、2011年1月中皮腫と診断。なんとその約9ヵ月後の10月に亡くなった。40年にわたって呉服商を営み、居住歴などからもアスベストに曝露した可能性があるのは阪神・淡路大震災後わずか40日間のがれき撤去作業だけだった。手作業でがれきを集めたり、掃除をしたり、そんな作業だったという。

「夫は帽子の上にジャンバーを二重に着て作業に行っていた。防じんマスクなんてありません。いつも帰ったら帽子とジャンバーが(粉じんで)真っ白くなっていました」(タヨ子さん)

 実は阪神・淡路大震災のがれき処理が原因とみられるアスベスト被害では清さんを含め4人が労災認定を受けている。さらに明石市職員1人が中皮腫で亡くなり、現在公務災害の申請中だ。