現地の通貨で考える
日本円に換算しないようにする

 日本はいつしかモノの値段が下がる“デフレ”の国になってしまった。デフレの日本と比べて、物価高の国で「日本よりも高い」と嘆くのはいいが、物価安の国で日本円に換算し「日本より安い」と喜ぶのは困りものだ。

 移住当初はモノの値段を知るためにしょうがないことだが、物価の安い国で日本円に換算しても、日本人にとってはあまり意味を持たないからだ。

 日本人にとって1円、10円の違いは気にならなくても、現地の人にとっては、家計を左右するほどの大きな開きを生んでいることを知っておくべきだろう。

 日本人が現地の生活に慣れたかどうかのバロメーターになるのも、「日本円に換算せず、現地通貨の値付けのままで安いか高いかを判断できるかどうか」ということ。それができれば、現地の人と同じ金銭感覚になった証拠。立派に現地生活に溶け込んだといえるのだ。

 一方、ミドル・シニア層というと経済的に余裕がある人が多いためか、日本的金銭感覚が当たり前という環境が気にかかる。

 割高の日本人料金になんの疑問を持たない人も多く、「日本の物価感覚で違和感なければ問題なし」といった感じだ。心配なのは、こういう日本の金銭感覚を持ち込むと、カモにされたり、余計なトラブルに巻き込まれる危険性が出てくること。

 観光滞在であれば「いい経験、いい勉強」だけで終わってしまうのだが、移住となると、そうもいってはいられない。

 物価の安い人気のアジアは日本人にとって身近な存在。それだけに“1ドル”の重みや価値を知らないと、現地の文化や生活など何も見えてこないのではないだろうか。