ポーラ・オルビスホールディングスの鈴木郷史社長、元ナンバー2らの証人尋問があった東京地裁ポーラ・オルビスホールディングスの鈴木郷史社長、元ナンバー2らの証人尋問があった東京地裁 Photo by Masataka Tsuchimoto

化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングスの元ナンバー2が「鈴木郷史社長による約20年前の書類捏造疑惑」を内部告発したことをきっかけに、鈴木社長は叔父の妻に巨額の遺産対象確認訴訟を起こされた。2件の裁判が進行中で、うち1件の裁判の証人尋問が9日あり、「鈴木社長vs元ナンバー2ら」のガチンコバトルが繰り広げられた。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

 化粧品大手ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の経営基盤を揺るがしかねない創業家内の遺産騒動が勃発、その裁判がヤマ場を迎えている(詳細はダイヤモンド・オンラインの特集「ポーラ遺産騒動に新展開」参照)。

 HDの鈴木郷史社長を相手取り、2000年に急死した叔父(2代目社長の鈴木常司氏)の妻、千壽氏が「鈴木社長所有のHD株式約4191万株(提訴時の時価総額で約2200億円)などが本来は遺産相続対象だった」と主張し、東京地裁で1年余り係争が続いている。

 訴えの根拠は、現役のHD取締役(当時。以後は「元ナンバー2」と表記)が17年12月に行った内部告発。故常司氏は戦後日本の大富豪の一人に数えられるほどの富を築いたが、元ナンバー2は約20年前の遺産相続に関連し、「鈴木社長がグループ有力会社株の売買契約書を死後に捏造し、本来遺産だった約69万株(その後の上場でHD約4191万株に転換)を1株1円で不正に入手。その不正を起点にグループ支配を優位に進めた」という疑惑を暴露した。

 さらに元ナンバー2は、神奈川・箱根のポーラ美術館を運営するポーラ美術振興財団(理事長は鈴木社長)所蔵の美術品839点(評価額計約28億円)に関しても、約20年前に同様の手口で「寄付確約書」の捏造があったと告発した。

 これまでの裁判で、鈴木社長は両疑惑を全面的に否定。原告側が捏造を認めた証拠と主張する鈴木社長の音声データについては、「事実無根であってもグループのレピュテーション(評価)が毀損されることは間違いないと考え、『ひとまず話を合わせて聞き置く』という態度を取った」などと反論している。

 9日は美術品に関する遺産訴訟の証人尋問があり、鈴木社長、元ナンバー2、告発を仲介したHDがリスク管理業務を委託していた会社の男性の計3人が出廷した。またこの日、原告の千壽氏が初めて法廷に姿を見せた。

 ドキュメント形式で、この日あったことを順に追っていこう。