コロナ追跡アプリ写真はイメージです Photo:Chesnot/gettyimages

新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触した可能性を知らせる「接触確認アプリ」が、いよいよ運用開始だ。安倍政権はこのアプリを感染第2波阻止の切り札と意気込むが、「失敗はほぼ確実」という声も聞こえてくる。その声の主の1人、経済学者の依田高典・京都大学教授に聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド特任アナリスト 高口康太)

補足率は10%未満
人海戦術以下の効果しかない

 接触確認アプリはスマートフォンのブルートゥース通信機能を使って、新型コロナの陽性者と接触した可能性を検出・通知する仕組み。陽性者と接触し、さらに何らかの症状を示している人には早期の検査や受診を促し、さらなる感染拡大を防ぐ狙いだ。安倍晋三首相は緊急事態宣言解除の記者会見で、接触確認アプリの導入で第2波を抑止できるとの考えを示している。

 アプリには米グーグル、米アップルが共同で提供するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を活用しており、プライバシー保護の厳格な対応が講じられているという。このアプリについて「失敗する」と断言しているのが、京都大学の依田高典教授(行動経済学)。政府のデジタル市場競争会議(議長=菅義偉内閣官房長官)の議員を務め、デジタル産業政策に通じている。始まる前からなぜ失敗確実と言えるのか?

新型コロナウイルス接触確認アプリについて厚生労働省発表のリポート「新型コロナウイルス接触確認アプリについて」より 拡大画像表示

――接触確認アプリは安倍首相肝いりの感染拡大防止ツールですが、なぜ「失敗する」と断言できるのですか。

 効果を出すには人口の6割弱がアプリをインストールすることが前提とされています。しかしこれは実現困難な目標です。内閣官房・情報通信技術総合戦略室の仕様書にも引用されている通り、「令和元年版情報通信白書」によると、日本のスマートフォン保有率は64.7%。つまり、保有者のほぼ全員がインストールしてくれなければ、目標は達成できません。

 アプリのインストールは「お願い」であり、強制ではありません。さて、どのぐらいの人がインストールしてくれると思いますか?