気分転換が難しい
在宅勤務にもメリットが

 Aさんは、勤続年数8年になる40代の独身女性社員です。昨年、在宅勤務中に電話面談した彼女は、自宅での業務は効率が良くないことや、ほぼ毎日ずっと家の中にいるため気分転換が難しいことにストレスを感じていました。一方、在宅勤務では通勤時間が取られないことや、同僚や上司に仕事を中断されずに集中しやすいことを大きなメリットと感じていました。

 職域接種でワクチン接種を済ませたAさんは、現在、自宅のパソコンにスクリーンを追加で付け、仕事の後にはなるべく散歩に出かけ気分転換を行うよう努めるようになり、このまま在宅勤務を続けられるとうれしいと考えています。

ワクチン接種はしたくないが
出社したい人の事情

 一方、出社勤務を喜ぶ社員たちがいることも事実です。

 Bさんは、勤続5年になる30代の1児の母です。Bさんも、Aさん同様に在宅業務における効率低下や気分転換の難しさにストレスを感じていました。通勤や会社での感染リスクを減らす在宅勤務、感染の確率を下げるとされるワクチン接種など、感染予防を極力徹底したい気持ちはあるものの、保育園に通う息子が保育園閉鎖により在宅になると、その日は日中の育児も加わり、在宅での仕事に限界を感じていました。

 また、もう一人子供が欲しいBさんは、コロナワクチンと妊婦に関わるさまざまな情報をもとに、ワクチンを接種したくないと考えています。彼女は、緊急事態宣言が明け、出社できるようになることを楽しみに待っています。

 どちらの社員も、コロナワクチンの接種状況などの理由をもとに判断して希望(結果)を持っているのではなく、在宅/出社勤務という自分の希望がかなうことが、一番の関心事でした。産業医としては、両者の理由に良いも悪いもなく、全ての理由は正当だと感じています。