人は誰でも風邪をひく。しかし、いつもピンピンしている人がいる。彼らには「早期発見・即対処」という共通点がある。風邪をひきそうになっても悪化させないから、周囲から「風邪をひいているように見えない」のだ。では、彼らはいつ、何をしているのか?

本記事では、現役の内科医、救急救命医、薬剤師などの知見と医療統計データ、150近くの最新の医学研究論文や文献を総動員し、「医学的に正しい風邪対策」を紹介する裴英洙氏の新刊『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33』から、内容の一部を特別公開する。(構成:今野良介)

風邪は自然に治る病気

風邪は、医学用語で「急性上気道炎」と呼ばれています。医学的に見た風邪の特徴は、大きく分けて4つあります。

(1)上気道(鼻からのどの通り道)に炎症が起こる
(2)原因の90%程度はウイルスである
(3)良性の病気である
(4)ほとんどが自然治癒する

つまり、「主にウイルス感染で上気道に炎症を起こすが、自然に治る」のが風邪です。つまり、風邪は、安静にしていれば自然に治るとわかっている病気です。

あなたが「風邪かも……」と思って病院に行ったときのことを思い出してください。
医者は、いくつかの薬を処方し、「安静にしてください」と言うことが多いはずです。

現代医学では、風邪を根治する特効薬は開発されていません。医者が処方するのは、あくまで熱や痛みなどを和らげる「対症療法」としての薬です。風邪の原因となるウイルスを撃退して、根治させるものではありません。

患者が一刻も早く治したいと思っていても、医者は根治させることができないのです。

医者は風邪をどのように診断しているのか?

風邪がはやり始めると、病院には「熱があります」「せきが出始めました」「鼻水が止まりません」という症状を訴える患者が増えます。

また、「先生、風邪をひきました」とか「2日前から風邪です」という人もいます。過去に似たような症状を経験しているために、「風邪だ」と自己診断しているのです。しかし、多くの医者は、「風邪ですね」とすぐに結論は出さないでしょう。

風邪は、誰もが知っている病気です。医者が風邪を「風邪だ」と診断するのはたやすいことだろうと思われるでしょう。しかし、それは間違いです。風邪は、もっとも確定するのが難しい病気の1つです。それどころか、ほとんどの場合、医者は風邪の原因を特定できないまま、患者に薬などを処方し、治療行為をしているのが普通です。

医者は、複合的な情報と、患者の時系列の症状を見て、重大な別の病気が陰に隠れていないことを判断できた場合に、「おそらく風邪だろう」と診断します。この考え方を「除外診断」といいます。実は、100%の自信を持てないときが多いのです。

病院に行っても風邪は治らない医者は「症状をやわらげること」しかできない

風邪患者の一般的な症状の変化を、時系列で表してみます。

(1)ちょっと寒気がする
(2)鼻水が出てきた
(3)次の日、熱っぽいかも
(4)のども痛くなってきた
(5)熱が高いから家で休もう
(6)しばらく寝たらのどの痛みが治まってきた
(7)鼻の通りもよくなってきた
(8)2日寝てたらよくなった
(9)さあ、今日から仕事に行こう

医者が、自信を持って「あなたは風邪です」と言えるのは、(9)の段階です。たとえば(4)の「のども痛くなってきた」のような1つの症状だけでは風邪と確定できません。極論ですが、医者は、「風邪でした」という過去形でしか、風邪だと完全に断定できないのです。