最低賃金も受け取れず
働けないと「強制帰国」

 技能実習生の中には、入国後一度も最低賃金法に従った賃金を受け取ったことがない人もいる。

 そして、後から弁護士に相談し、最低賃金法に沿って計算し直した未払賃金を請求すると、受け入れ企業が倒産する事例もたくさんある。

 つまり、経営不振に陥り倒産直前になって賃金が支払われなくなったのではなく、入国当初から最低賃金法に従った賃金を支払う意思も能力もない事業者が、技能実習生を受け入れているわけだ。

 入国管理局は、技能実習生の入国前の審査で、受け入れ企業について、適正かどうかを審査しているはずだが、実質的には経営状況に対する審査が機能していないと言っていいだろう。

 労働関係法令を遵守する比較的大きな企業でも問題は起きている。

 例えば、都合の悪い技能実習生を強制的に帰らせる「強制帰国」の問題だ。

 通常、技能実習を受け入れるのは、人手不足に悩む企業であり、監理団体に毎月数万円という管理費を支払って、技能実習生を受け入れる。

 だが労災で長期治療が必要となった人や、滞在中に結婚や妊娠に至った人など、労働者として使えなくなった技能実習生は管理費ばかりがかかって都合が悪い。

 そのため、都合の悪い技能実習生を強制的に空港へ連れて行き、航空券を渡して帰らせるのだ。

 いったん、帰国すると、技能実習生の場合は、専門職や日系人の労働者と違って、もう一度、技能実習のために来日することはできない。

「強制帰国」という不正は、技能実習生の権利を無理やり奪い、また日本社会が、外国人実習生をただの安い労働力としてしか扱わず、一人の人間として、生活者として受け入れていないことの象徴だろう。

 筆者はこの10年余り、全国の約140人の弁護士らが参加する外国人技能実習生問題弁護士連絡会の活動をしながら、技能実習生受け入れの実態を見てきた。

 この制度を残したまま技能実習の修了生を外国人労働者として活用するという政府の方針には、強い懸念を持つ。

問題の多い新在留資格
人手不足対策で受け入れ拡大ありき

 現在、国会で審議されている入管法改正案は、「特定技能1号」(「相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務」に従事、家族帯同不可、滞在年数の上限あり)と、「特定技能2号」(「熟練した技能を要する業務」に従事、家族帯同可、滞在年数の上限なし)の在留資格を創設しようというものだ。