昨年、予防医療普及協会の立ち上げに携わり、『むだ死にしない技術』を上梓するなど、日本の医療業界に警鐘を鳴らすホリエモンこと堀江貴文氏。遠隔医療の先駆けとして、オンラインで閲覧可能な病気事典や通院システムを確立した株式会社メドレーの代表取締役医師・豊田剛一郎氏。まったく違う畑のスペシャリストである両者だが、医療に対する見解はほぼ共通している。未来を見据えた医療・健康のあり方を対談で語ってもらった。(文/佐藤翔一)

堀江貴文が迫る、日本医療が「治療から予防」へ舵を切れない理由実業家の堀江貴文氏(左)、豊田剛一郎・メドレー 代表取締役医師が、未来を見据えた医療・健康のあり方について語り合った Photo by Keisuke Yasuda

予防医療が日本では
本流になりづらい理由

豊田 私は医師としてずっと疑問に思っていたことがあります。ほとんどの医師は、病気に興味があって予防医療に興味がないんです。

堀江 僕も前から不思議に思っていたんですが、それってなんでそうなっちゃったんですかね。

豊田 まず大学などで病気のことしか習わないんですよ。病気を治す、つまり「治療する」のがカッコイイみたいな風習を感じざるを得ません。病気を防ぐ「予防」に関してはまだ本流ではないのかなと思います。

堀江 なかには予防接種を頑張っている医師もいますよね。感染症対策とか。消毒するようになったのも、割と最近じゃないですか。こうやって予防に注力していた人たちが多くの命を救ってきたにも拘らず、それが本流じゃないのは本当に不思議。

豊田 ほとんどの人が大学を卒業すると、大学病院や大きな病院に配属されます。そこで診察して、治療して、患者さんから「治りました。ありがとうございます、先生」と言われる。それが医療だと思ってしまうんですよね。やっぱり、予防医療の対象は元気な人じゃないですか。ある種のやりがいみたいなものを感じられにくいのが現状なのかもしれません。

堀江 なるほどね。「やりがい」「感謝」の問題もあるけれど、それ以上に問題を感じていることがあって。僕は予防医療普及協会を立ち上げたんだけど、エビデンス至上主義者みたいな人たちにめっちゃ攻撃されるんですよ。

豊田 それは堀江さんたちがやっているピロリ菌に関する事業ですか?

堀江 そう。例えば、ピロリ菌を除菌して胃がんが減るのか。何十年間も統計を取らないと確実な効果とは言いづらいから、完璧な結果というかほぼ100%のエビデンスがないとダメ、みたいな。でもそれを待っていたら、それで救える人がいるのにあと30年とか待つのかって話。

豊田 そうですね。他に私が疑問に思っていることで言えば、国民皆保険制度についてですね。保険点数は病気にしか付きません。予防接種も出産も病気じゃないから自費なんです。