企業家精神とは気質の問題ではなく行動の様式であるダイヤモンド社刊
2100円(税込)

「企業家精神とは、独特の特性をもつ何かである。気質とは関係ない。実際のところ、私はいろいろな気質の人たちが、企業家的な挑戦を成功させるのを見てきた」(ドラッカー名著集(5)『イノベーションと企業家精神』)

 ただし、確実性を必要とする者は企業家に向かないという。だがそのような者は、政治家、軍人、船長など、いろいろなものに向かない。いずれも意思決定を必要とする仕事だからである。意思決定の本質は不確実性にある。

 意思決定を行なえさえすれば、学ぶことによって、企業家として行動できるようになる。企業家精神とは、気質ではなく行動である。

 自覚しているといないとにかかわらず、あらゆる仕事が原理に基づく。企業家精神もまた、原理に基づく。企業家精神の原理とは、変化を当然のこと、さらには健全なこととすることである。

 イノベーションが必然である分野、すなわちイノベーションの機会が存在する分野において、資源の最適化にとどまるほどリスクの大きなことはない。したがって、論理的にいって、企業家精神こそ最もリスクが小さな道である。

 ドラッカーは、企業家精神にリスクが伴うのは、企業家とされている人たちの多くが、方法論を持っていないからだという。方法論さえ学べば、リスクは急速に小さくなる。

「企業家として成功する者は、女神の口づけやアイデアのひらめきを待ってはいない。彼らは仕事をする。大穴は狙わない」(『イノベーションと企業家精神』)