社員に英語力を求める企業が増えている。昇進の条件に英語テストの成績を加味したり、社内の公用語を英語にして「できない社員」のやる気を奮い立たせるケースも。そして英語力の差は年収や地位の差となって自分に跳ね返る。

ビズリーチ
キャリアカンパニー カンパニー長
多田洋祐取締役

 日本企業の社内英語公用語化の流れは、2010年のインターネット販売大手の「世界企業になる」という宣言から始まり、ファストファッション大手などが追随した。

 それまでも、海外事業で収益を上げる総合商社は、すでに英語力を昇進の要件の一つとしていることが多かったが、ここに来て、不動産や製造業といったドメスティック企業でも社員に英語力を求めるケースが増えている。

 例えば、国内市場を主戦場とする不動産大手は、海外顧客が増えていることから英語能力テストなどで一定の点数を取るよう総合職に求めたという。同時に企業間では社員の英語力向上の支援策として、社内に英語講師を呼んでさび付いた英語を磨き直す機会を設けたり、英会話教室に通うための補助金を支給する動きも広がっている。

日系企業でも英語力を
求める場面が増加

 企業は今、ビジネスパーソンの基本的な能力の一つとして英語力を求めている。そして英語を使ってビジネスを進めるシーンも確実に増えている。特に顕著なのが20年までに訪日外国人数4000万人を目指すインバウンド関連企業。販売業では売り場を訪れた外国人を販売員が英語で接客しているし、飲食業では英語でメニューを説明しオーダーを取っている。

 会員数70万人、会員平均年収890万円という会員制転職サイトのビズリーチが会員に対して行ったアンケートでは、「仕事で英語を利用する機会があるか」という問いに対し、72%もの人が「ある」と答えている。ビズリーチでキャリアカンパニーカンパニー長を務める多田洋祐取締役は「外資系企業では外国人上司とのコミュニケーションや本国との連絡のために英語力が不可欠ですが、日系企業でも成長機会を求めてグローバル展開を進めており、社員に英語力を求める場面が増えています。製造業でも英会話能力が必要となる場面が増えています」と解説する。製造業は海外企業との技術提携が急増していることが背景にある。

「一方で、日系企業が海外の優秀な人材を採用するケースが目立っています。その場合、社内で英語が通用すれば仕事が進めやすくなり、外国人社員と日本人社員のコミュニケーションも図れます」

 と、企業の英語力強化の動機を説明する。