「2017年3月期の業績予想は、当社が施工不良、データ改ざんおよび虚偽報告を行った一連の問題により、現時点では算出が困難」──。

 海洋土木大手の東亜建設工業は、今年6月に発表した16年3月期決算に続き、17年3月期第1四半期決算でも通期の見通しを立てられず、視界不良の経営が続いている。

羽田で不正工事の東亜建設に大手ゼネコンによる救済論も海洋土木大手の東亜建設工業は施工不良とデータ改ざんが響き、受注見通しが立たず業績予想が出せない(右上写真は2017年3月期第1四半期決算短信)

 今年5月、東亜は東京国際空港(羽田空港)C滑走路の地盤改良工事での施工不良をデータの改ざんにより隠蔽し、発注者の国土交通省へ虚偽報告したと公表、世間は騒然となった。その後、羽田空港で1件、愛媛県の松山空港で1件、福岡県の福岡空港で2件、同様の事例が見つかった。

 いずれも共通するのは、同社が独自開発した「バルーングラウト工法」という新技術が用いられたこと。地震の際に地盤の液状化を防ぐため、地中に薬液を注入し、地盤を固めるのが特徴だ。

 だが、今回の工事では薬液が計画通りに注入できず、地盤が隆起するなどの問題が発生し、不適切な工法だったと東亜は認めた。

 東亜は末冨龍副社長を委員長とした調査委員会を設置し、国交省も有識者委員会を立ち上げて原因究明を行った。7月に提出された調査報告書によれば、工法の未熟さに加え、「今後の受注に影響するから絶対失敗できない」というプレッシャーから、隠蔽に走ったことが原因とされている。