企業の設備投資が戦略的に行われるようになった今、企業誘致は進出企業の活動をサポートする環境整備や、地域資源を活用した誘致施策が求められる。地元企業の技術力や人材の高度化を進め、魅力のある地域づくりを行うことが、企業の進出を促すとともに、地域経済の発展につながっていく。
(日本立地センター参与・帝京大学経済学部客員教授 德増秀博)

 製造業はここ1~2年の円安によって、国内生産回帰に動いているといわれてきた。電機、自動車などの主要製造業の中には海外生産の一部を国内に切り替えたり、国内生産比率を生産額ベースで引き上げる方針を打ち出した企業もある。しかし、円の為替レートと海外生産比率の推移を見ると(図1参照)、円安の動きの中であっても海外生産比率は伸びている。これは国内回帰が限定的であることを示しており、多くの企業は現地で根を張りつつ、市場の動きを見ながら国内生産との両足で、為替リスクに対応していることがうかがえる。

 経済産業省の「工場立地動向調査」を見ると、国内工場立地件数・立地面積の水準は、ここ数年はほぼ横ばいで推移している。この傾向は今後も続くとみられるが、こうした状況下でも、積極的に投資を行っている分野もある。例えば、食品関連や物流関連では、工場、施設の新増設が活発だ。

 一方、新規に工場を立地する代わりに、既存工場の遊休施設を活用したり、遊休工場を買収して生産活動を行う企業もある。その他、自治体が企業から購入・整備した未利用工場跡地への進出や、空き校舎に工場やオフィスが入居し活動するなど、既存のインフラを活用する動きも近年特に目立っている。