日本のみなさま、はじめまして。フィンランド在住の作家、モニカ・ルーッコネンともうします。

 いま、世界的に、モノを減らしたり、捨てたりするムーブメントが起きています。しかし、私が提唱したい価値観はそれとは少し異なります。

 ただただモノを減らしていくだけだと、最後はなにも残りません。
「持たない」ということをファッションとして楽しむのはいいと思いますが、はたしてそれでしあわせと言えるでしょうか?

 フィンランドの人びとは、そもそもあまりモノを買いません。その代わりに、「いまあるもの」を大切にするのです。家具や食器などは、おじいちゃんおばあちゃんが使っていたものを使います。

「持たない」のではなく、「いまあるものを大切にする」。

 少しだけ見る角度を変えれば、私たちのまわりには素敵なモノゴトであふれています。そんなことに気づいてもらえたらと思っています。

 この連載では私の最新作『フィンランド人が教えるほんとうのシンプル』(モニカ・ルーッコネン/ダイヤモンド社)より、記事を厳選してお届けします。

「中古」の価値を見直そう

 日本では新品のモノを買うのがスタンダードで、「中古」というと「他人が使ったもの」という印象で、躊躇する人も多いかもしれません。

 ひと昔前は、フィンランドでも「中古品は安く手に入れるために学生が使っているもの」という印象でした。しかしいまは、環境への配慮からリサイクルする人が増えています。使ったものを再利用することが前向きにとらえられてきているのです。

新品を買いたがる日本人<br />中古を生かすフィンランド人モニカ・ルーッコネン Monika Luukkonen 北フィンランドに住む作家・ノンフィクションライター。フィンランドのライフスタイル専門家。1971年フィンランド生まれ。企業のマーケティング担当としてフィンランドと日本を往復したり、日本に滞在した経験をもつ。2000年より翻訳家、作家としての活動をはじめ、現在は「Monika Luukkonen Literary Agency」を経営。フィンランドのシンプルな生き方、考え方を世界に広めるべく、情報発信を続けている。ひとり娘の母。著書に『ふだん着のフィンランド』(グラフィック社)がある。

 ここ数年、リサイクルやフリーマーケットの活動が国家プロジェクトのようにさまざまなかたちで行われています。国民ほぼ全員がリサイクルをし、同時に中古品を売買しているのです。現代のフィンランドのライフスタイルの流行とも言えるでしょう。

 誰もがオンラインのフリーマーケットサイトやフェイスブックのリサイクルグループ、地元のフリーマーケットなど、あらゆるかたちでかんたんにリサイクルを楽しんでいます。

 いまのフィンランドでは「自分が使えなくなったものを誰かに使ってもらえることで、地球環境に貢献できる」といったポジティブな意識を持っている人がほとんどです。私のお母さんも昔は、フリーマーケットで服を買ったら汚いのではないかと言って、購入するのを好みませんでしたが、いまではリサイクルが日常生活に溶けこんでいるようです。

 フィンランドでは中古車を買うのはメジャーです。新しい車は、なんと税率が100%なのでふつうの人にとっては手が届きません。もちろん中には新しい車を買う人もいますが、中古のものを買うのはあたりまえなのです。もしくは、輸入の関税はかかりますが、ドイツまで行って新車を購入する人もいます。

 中古をネガティブにとらえず、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

中古のモノはいいことづくめ

 先日フリーマーケットに行き、ティーポットを買いました。ずっと探していたかたちと大きさで、いままでふつうのお店では見つかりませんでした。安くていい状態のものが買えてとてもうれしかったです。

 最近、オンラインのフリーマーケットで売ったのは、娘の古くなった自転車2台。5日もかからずに売れてしまいました。 

 どちらも買い手からメールが届き、約束した時間に家まで来てもらって、品物の支払いを受け取り、買い手は車で持って帰りました。とっても楽ちんでした! 

モノが減り、倉庫にも新しいスペースが生まれ、ちょっとした収入にもなり、相手にも喜んでもらえる。リサイクルはいいことづくめです。

 また、布地をリユースすることもスタンダードになりつつあります。フィンランドでは、衣類をごみ箱に捨てることは難しいのです。着なくなった服は、あちこちにある「チャリティーボックス」に持って行きます。