運用の専門家を自称する人が複数集まるとする。個人の資産運用にあって、資産配分が重要であることについては誰も異論はない。次に、運用資産に外国の資産も含めることについても、反対を述べる人は少ないだろう。

 筆者も現在、外国株式への投資については積極的な意見を持っている。数年前までは、外国株式に投資する場合に「許せる」と思える範囲の手数料の商品がなかった。理屈上は外国株式にも投資したいが、現実的には個人に向いた投資商品がないので仕方がないと思っていた。しかし現在、外国株投資に関する環境は大きく改善した。外国株式に投資するインデックスファンドで、ノーロード(販売手数料ゼロ)で信託報酬が年率0.6%程度のものが複数出てきたし、海外のETF(上場型投資信託)で、もっと信託報酬の安いものに投資することもできる。

 自称専門家たちの意見が分かれるのは「外国債券」の採否だ。個人資産運用の入門書などを見ると、どちらかといえば、外国債券にも投資する資産配分を推奨している人が多いように思うが、筆者は通常の個人の資産運用で(金額にして数億円単位まで)、外国債券に資産配分することには反対だ。

 複数の先進国の国債で構成された債券指数で見ても、外国債券のリスクは、ざっと10%くらいある(為替ヘッジなしの場合)。これに対して、期待リターンは、円債と外債でどちらが大きいともいえないから、円債並みと考えるのが妥当だろう。もちろん、結果のベースでは、外債が勝ったり、円債が勝ったりするが、「期待」のベースでは、外債のほうが期待リターンは高いと考える人が多ければ、為替レートが円安になるなどの市場の調整が働くはずだからだ。

 最適な資産配分を計算する場合には、国内債券と外国債券は、現在であれば1%程度の、同じ期待リターンで計算せざるをえない。