9月4日に香港立法会(香港議会)選挙が行われた。2014年に香港トップを決める行政長官選挙の制度改革案に反対し、繁華街の幹線道路を占拠した大規模デモ「雨傘革命」の挫折後に、政治活動に身を投じた若者らが6議席を獲得した。彼らを含む「反中国派」全体で30議席を得て、法案の否決が可能になる立法会定数70議席の3分の1(24議席)以上を占める画期的な勝利となった。

 一方、日本では終戦記念日の8月15日、SEALDsという学生組織が解散した。彼らは、カフェやクラブで流れる音楽を使い、独特のラップ調で安全保障関連法や憲法改正への反対を訴えて、デモを全国各地に広げていった。だが、実際にデモに参加したのは国民のわずか3%に過ぎず、デモが嫌いな「サイレント・マジョリティ」である中流の支持は全く得られなかった(第115回・下)。安保法制など、彼らが反対する法律は国会でことごとく成立し、今年7月の参院選で敗北すると、あっさりと解散してしまった。

なぜSEALDsは香港雨傘革命のように議会進出できなかったのか上久保ゼミ生のDemosisto幹部へのインタビュー。筆者撮影

 9月19日から24日までの間、筆者は上久保ゼミ「競争力養成プログラム」の学生とともに香港を訪問した。昨年に引き続いて香港民主化運動の調査が目的で、香港立法会(香港議会)議員、若者が組織した新党「Demosisto(衆志)」の幹部、学者などに面会した。

 香港と日本では、同じように学生の政治運動の挫折を経験した。しかし、挫折を乗り越えて政党を結成し、新しい政治勢力となった香港の若者と、あっさりと消滅してしまった日本の若者の違いは、いったい何であろうか。これが、今年の香港訪問の問題意識となった。

なぜSEALDsは香港雨傘革命のように議会進出できなかったのか「競争力養成プログラム」は、香港中文大学の授業に参加し、「You have,We don't have!!」と題して、被選挙権の国際比較についてプレゼンてーションを行った。筆者撮影

 学生が着目したのは、日本と香港の「被選挙権」の違いであった。日本の被選挙権が衆院で満25歳以上、参院で満30歳以上なのに対し、香港立法会の被選挙権は満21歳以上に与えられている。日本と香港では、日本のほうが、より民主主義が発展していると普通は考える。だが、被選挙権に関しては、香港の若者が持っている権利を、日本の若者が持てていないのである。

 学生が「日本の若者の政治意識が低いのは、被選挙権を持っていないからではないか」という仮説を立ててきた時、筆者は驚いた。日本でほとんど指摘されていない論点が、学生から提示されたからだ。