PCからモバイルへ、メールからチャットへ、人と人とのつながり方は急速に変わりつつある。それは職場においても同様で、今、とくに注目されているのが、いつ・どこでも、どのデバイスからでもコミュニケーションできる「ビジネスSNS」だ。この新たなツールの導入によって、企業のコミュニケーション、コラボレーションはどのような進化を遂げるのだろうか。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌で『世界標準の経営理論』を連載中の経営学者、入山章栄 早稲田大学ビジネススクール准教授と、松橋博人 ワークスモバイルジャパン代表取締役社長に語ってもらった。

PCベースのツールは
「どっこらしょ感」がある

入山章栄
早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)准教授 経営学博士

入山 最近、組織の中でコミュニケーション、コラボレーションを促進するためのツールとして「ビジネスSNS」が注目されているそうですね。

松橋 これまでのPCをベースとしたグループウェア(組織内の情報共有のためのシステムソフトウェア)的なツールは、現場でのスピード感が求められるコミュニケーションには向いていない場合があります。例えば、あるアパレル系チェーン店では、店長が日報をメールで本部に送っているんですが、すっかり形骸化していて"やらされ感"満載でした。一方、本部の担当者もバイヤーの仕事を兼務していたりしてオフィスにいないことも多く、後から何日分もまとめてチェックしている状態。これでは、本当に必要な情報はますます入らなくなるでしょう。

入山 たしかにPCベースのツールは、「どっこらしょ感」がありますよね。机に座って、さあ、今から情報共有するぞと構えるような面倒さが。

松橋博人 ワークスモバイルジャパン 代表取締役社長

松橋 その点、クラウド基盤でモバイルに最適化されたビジネスSNSは、いつでもどこでもどのデバイスからでもコミュニケーションできるのが特徴です。当社の「LINE WORKS」は、LINEのインターフェースを踏襲したビジネスSNSで、コンシューマ向けと同じ使いやすさと、ビジネスに耐える安定性、セキュリティを備えています。

 クラウド化というのは、じつはけっこう面白くて、いろいろな副次効果をもたらします。さっきの例でいうと、ある店舗から「今、この商品が売れ始めています!」という兆しが報告されると、本部では全店舗にその情報を流して販促をかけるといったことが可能となり、売上増大につながります。さらに、店長からすると、自分が発信したリアルタイム情報によって全社の売り上げが増えるわけですから、モチベーションが上がるという効果もある。

入山 それは面白いですね。現場・本社間の情報のタイムラグって、日本だけでなく、世界中の企業の課題の1つなんですが、それを解消できる可能性があるということですね。現場のオペレーションのその瞬間の情報が本部にリアルタイムで入る、しかも写真もパッと撮って送れたりする。

松橋 数年前までは、クラウドといっても、どちらかというとPCの世界観で、メールベースだったりしましたけど、徐々に世の中がPCからモバイルへ、メールからチャットへという流れになってきています。

入山 いま注目のIoTベンチャー、ソラコムの玉川憲社長とはちょっとした友達なんですが、たしか彼はこの前、社内メールを禁止したと聞いています。僕も何となくその感覚はわかります。今はメールでは「遅い」時代ですよね。いちいち『ご査収ください』なんて書いている場合ではない(笑)。

松橋 ええ、それはもう必要ないでしょう。当初、LINE WORKSのどこに勝算があるのかとよく聞かれましたが、一番の強みは「メールではなくて、もっと早いチャット。PCではなく、より親密性が高いモバイル」とお答えしていました。まさに、新しい時代の流れにフィットしたツールということです。