「やれ」と「やる」、たったひと文字違うだけなのに、大きく意味が異なります。「やる」と言ってもらうために、リーダーは巧妙な策をとらなければいけません。新刊『トヨタの伝説のディーラーが教える絶対に目標達成するリーダーの仕事』から、「自らやる」流れについてお教えします。

常に「どうする?」と問いかけるリーダーの思惑とは?

「他人にやらされる」と「自らやる」では大きく違う

 リーダーが「やれ」と指示しても、スタッフは素直に従ってくれるものではありません。

 従ってくれたとしても、本人のなかに「やらされ感」があると、質の高い仕事をしてもらえません。やらされ感で仕事をしている人が1人でもいれば、チームに悪影響を与えてしまいます。

 同じことをするのでも、「他人にやらされる」と「自らやる」では大きな違い。

チーム全員が意欲をもって仕事ができるように、「自らやる」雰囲気をつくることもリーダーの仕事です。

 そんな雰囲気づくりが上手だった歴史上のリーダーに、徳川家康がいます。

 関ヶ原合戦の前、徳川家康は上杉景勝を討伐するため、各地の大名を引き連れて会津に向かっていました。

 その途中、大坂で石田三成が家康打倒の兵を挙げたとの一報が伝わり、すぐに家康は大名を集めて今後の方針を決める会議を開きます。これが世に言う「小山評定」です。

 その席上で家康は、「このまま自分に味方してもいいし、三成方についてもいい」と大名たちに判断をゆだねました。

 大名たちは三成に妻子を人質にとられていることもあり、方針を決めかねて黙っていました。そのとき、福島正則が口を開き「家康様に味方します」と宣言。

 これにより会議の流れは決まり、その場にいた大名のほとんどが福島正則に賛同して家康支持を表明し、三成を倒すために西に向かったのです。

 じつは家康と福島正則は事前に示し合わせており、会議の流れを巧みに誘導していたという説もあります。

 もし家康が「三成を打つためにこの家康についてきてくれ!」などと声高に号令をかけただけなら、あのような結果にはならなかったかもしれません。

 大名たちは自由な選択肢を与えられ、そして福島正則に影響されながらも自分たちの意思で決断を下したことで、打倒三成に向けて一致団結した、と考えることができます。