リーマンショック以降、世界の大手自動車メーカーは急激な売り上げの減少に悩まされた。ところが、世界と日本の市場で、リーマンショックに関係なく、長年販売台数を増加し続けているメーカーがある。アウディだ。

 アウディの日本での販売台数は4年連続増加中。2006年には前年比400台程度の微減を記録したものの、それを除けば、99年以来、一貫して上昇傾向にある。そして、2010年は、バブル景気にわいた90年の1万6691台を超え、過去最高を記録する。世界のアウディグループ全体で見ても、販売台数や営業利益といった指標が近年、過去最高を更新し続けている。

 大喜多寛アウディジャパン社長は、アウディ好調の要因について、まずは商品力の強さをあげる。「2007年にTT(2ドアのスポーツカー)が導入されて以降、さらにクルマがよくなった。特にエンジンには自信を持っている」。

 日本の自動車メーカーはハイブリッド車や電気自動車を環境対応車の中核に置き、消費者に訴求しようとしている。ところがアウディでは、従来のガソリンエンジンを徹底的にブラッシュアップすることで低燃費化を実現した。

 TFSIと呼ばれる一連のエンジンは、圧縮した空気を送りこんで効率的に燃焼をおこすターボなどの過給器を利用する。出力を落とさずにエンジンを小型化し排気量を減らすことができるから燃費が少ない。またTFSIと合わせて、低燃費化を実現する効率的なトランスミッションも導入していることも大きい。かつての3.2リッターや2.8リッタークラスのエンジンは現在、2.0リッタークラスのTFSIエンジンに置き換わっている。

 ちなみに、TFSIと同種のエンジンは、同じグループにあるフォルクスワーゲンもTSIという名前で搭載している。日本の複数の自動車雑誌が行ったフォルクスワーゲンのTSI搭載車と、日本メーカーのハイブリッド車との実際の燃費比較では、TSIのほうが上回る結果もあった。

 そのうえ、TFSIでは低燃費と同時に高出力を可能にした。環境にも優しく、走る楽しさを犠牲にしないということで、走行性能にうるさい外車ユーザーにも受けたのだ。