タカタのエアバッグ事故が提起する2つの問題Photo:REUTERS/AFLO

エアバッグ部品のリコール問題で
経営危機に直面しているタカタ

 タカタというと、業界内ではエアバッグのメーカーとして、一気に知られるようになった。皮肉なことに、そのタカタの社名を世間に広く有名にさせたのもエアバッグであった。タカタが製造し、自動車メーカーに供給する安全装置、エアバッグ部品のインフレータ(膨張装置)による大量のリコール(回収・無償修理)問題である。

 元々、シートベルトやチャイルドシートで大手の部品製造業だったタカタは、エアバッグ分野には早くから進出していた。タカタからは日本の自動車メーカーだけでなく、欧米の自動車メーカーの多くも供給を受けてきた。それだけに「エアバッグ破裂事故」によるリコールが広がるにつれ、自動車メーカーの品質保証対応コスト引き当ても高まった。その一方、この問題でタカタの経営体質に対して、非難が続出したのは周知の通りだ。

 結果、タカタは大きな経営危機に直面している。経営支援を求めた「身売り」も時間の問題とされる。折しもタカタは4日、9月中間決算発表を行う。年内にも企業としての方向も定まることになりそうだ。

 ところで、、この「タカタ問題」は、いち部品メーカーの存亡の問題として決着するだけでなく、クルマの宿命的課題である「安全対応」の問題として考えるべきであり、ここで抜本的な解決の道をしっかりと探るべきであろう。

 すでに自動車産業は部品共用化・プラットフォーム共用化が進み、かつ電動化に自動運転、コネクティッド(つながる)にIT(情報通信)・AI(人工知能)と、クルマはよりブラックボックス化している。「安全対応」において、予防安全の重視からリコール制度の本質を改めて確認しつつ、完成車メーカーと部品サプライヤーの社会責任のあり方等を、ここでしっかり見直しておかねばならないはずだ。

 米国における欠陥エアバッグの最初のリコールからおよそ8年が経過した。事の発端は、米国内で起きたエアバッグの破裂事故で、タカタ製のインフレータが原因とされたことだ。

 しかし、この間、不具合の原因究明には時間がかかった。それが昨年2015年11月に米運輸省道路交通安全局(NHTSA)がタカタのエアバッグの欠陥を「企業の不祥事」と位置づけ、同社が適切なリコールや情報開示を行わなかったため米国内で被害が拡大したと、最大2億ドル(約240億円)の民事制裁金を課すと発表。同時にタカタと自動車メーカーに対し、2019年までにリコールを完了するよう命じた。