年末年始の海外は円高で好調<br />国内は明暗分かれた旅行業界円高を背景に年末年始の海外旅行が盛況。羽田空港の国際線ターミナルも出国ラッシュ
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 今年のカレンダーは1月4日が火曜日に当たり、旅行業界では「年始の休みが取りにくく、前年割れしてもおかしくない」と危惧されてきた。

 だが、ふたを開ければ「よく健闘した」(大手旅行会社幹部)。集計が出るのはこれからだが、円高を背景に海外旅行が好調。エイチ・アイ・エスがまとめた予約状況(12月23日から1月3日まで)を見ても、12月1日時点で前年同期比4.4%増加している。

「ハワイや米国本土向けは2ケタ増だが、フランスやドイツ、英国も伸びている」(同社)

 国内旅行についても集計はないが、堅調ではある。「国内旅行は海外旅行とゼロサムではなく、海外旅行がいいときは国内の旅行マインドも高まる」(大手旅行代理店)傾向は今年も続いた。

 明るい材料は、消費者の節約疲れ。クリスマスには、1泊16万円もするセントレジスホテル大阪のスイートプランが予約完売するなど、枚挙にいとまがない。

 ただそれでも、「明るさは一部にすぎず、話題が続かない」(東北地方の旅行代理店)のが現在の旅行業界である。たとえば、新青森まで新幹線が開通した青森県。「年末年始の新幹線乗車率は高かったと聞くが、観光客が増えた実感はない」(青森県観光課)。

 熱海など観光資源に恵まれた静岡県でさえ、「連泊が減り、1泊の予約が増えた。また宿泊単価も下落している」(静岡県観光協会)との嘆き節も聞かれる。

 薄明かりが差したといわれる旅行業界だが、「円高で海外旅行が相対的に安くなったところに、中国人の訪日旅行者が増えると、それが国内の宿泊単価をさらに押し下げかねない」(旅行代理店)。国内での春の訪れはまだ先だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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