街中の至るところにある看板や広告ポスターなどが、液晶ディスプレイを使用したデジタルサイネージ(電子看板)に続々と切り替わり始めている。デジタル化によってその利用方法は、看板・広告だけにとどまらず、新たなマーケティングツールにもなり始めた。その最前線に迫った。

新マーケティングツールとなるか<br />デジタルサイネージ最前線JR東京駅にある次世代型自販機

「意外な発見がたくさんありました。夕方から夜にかけてカルピスや果汁たっぷりの甘いジュースを買う人の3人に1人が30代の男性だったり、女性を意識して開発したラ・フランスの甘いジュースの購買者の半分が男性だったのです。仕事の疲れを癒やしたり、小腹がすいたのを甘いジュースで満たそうとしているのでしょう」

 こう話すのは、JR東日本グループ向けの自動販売機を運営・管理するJR東日本ウォータービジネスの阿部健司・営業本部自動販売機事業部長。この“意外な事実”はJR東京駅構内にある特殊な自販機によって判明した。その自販機とは同社が昨年11月に導入した“次世代型自販機”である。

 この自販機が次世代たるゆえんは、通常の自販機がジュースの見本缶を並べている面に、47インチのタッチパネル式大型液晶ディスプレイがあることと、顔認識センサーを備えている点だ。

 普段このディスプレイは飲料広告を表示しているが、ひとたび人が近づけば、通常の自販機のような飲料が並んだ画面に切り替わる。そして、顔認識センサーが性別と年齢層を認識し、天気と気温の情報を加味して、表示された飲料のうち数種類に対して「おすすめ」マークを表示する。若い人には炭酸飲料の提示が多いが、年齢が上がるにつれてお茶の提示が多くなるという具合だ。

 なにより、これまでは売りっ放しだった自販機で購買履歴を取れることは画期的なことだ。冒頭の例のように30代男性が存外、甘いジュースを買っていることがわかれば、こうした分析結果を基に商品企画につなげられる。

 次世代型自販機の売り上げは通常の自販機の2~3倍に上る。現在はまだ数台しか設置されていないが、来年3月までに首都圏で500台導入される予定だ。