新連載「クリティカル・アナリティクス」をスタートする。通説に捉われず批判的思考から国際関係、国内政治を分析する前連載の方向性を継続しながら、人間の合理的行動や、その背景にある歴史、文化、構造、慣習などさまざまな視角から深く広い分析を目指したい。どうぞよろしくお願い致します。

 菅直人政権が厳しい状況に追い込まれている。小沢一郎氏の「衆院政治倫理審査会」出席を巡る党内対立の激化する一方で、「ねじれ国会」下で、国会運営は難航が必至だ。野党は通常国会を冒頭から審議拒否する強硬姿勢を崩さず、「解散総選挙」「政界再編」が現実味を帯びてきたと言われる。今回は今後の政局を、政治家の行動と政治制度の関連から考える。

政治改革による制度変化と
政治家の行動への影響

 前連載では、90年代前半の小選挙区制導入などの「政治改革」によって、自民・民主の二大政党制と09年の政権交代が実現したと主張してきた(前連載第31回)。そして、現在の政局もその延長線上にあると考える。

 そこで、まず「政治改革」以降の政党執行部の権限強化と二大政党化を整理する。政党執行部の権限とは、主に候補者の「公認権」、政治資金の「配分権」と「人事権」だ。「公認権」は、1つの選挙区で当選者が3~5人であり、複数の自民党候補者が立候補した中選挙区制下では軽視されていた。

 かつて、多くの自民党議員は新人の時、派閥の支援で無所属として立候補し、当選後自民党に入党した。そのため、派閥が執行部よりも個々の議員に強い影響力を持った。しかし小選挙区制導入後は、各選挙区の当選者が1人となり、自民党候補も1人となった。党の公認を得ることが決定的に重要となった。

 また、「政治資金制度改革」では、政治資金の規制が強化され、政治家や派閥が政治資金を集めることは困難となった。一方、公的助成制度の整備で、政党に資金が集中した。執行部と派閥の力関係は逆転し、それは執行部の「人事権」強化にもつながった。