排便するたびに「何か違う」と感じていたXさん(50歳)。意を決し肛門科を受診すると、ステージ2の大腸がんが見つかった──。

 戦後一貫して右肩上がりだった大腸がんの死亡率も、この数年は減少傾向に転じている。診断技術や手術手技の進歩によるところが大きいが、最近使われるようになった大腸がんに有効な抗がん剤も寄与している。

 大腸の壁は内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜下層」「漿膜」の5層構造で、がんの進行度(ステージ)と治療方法は、がん細胞がどこまで深く潜り込んでいるかで決まる。がん細胞が粘膜表面にとどまっていればステージ0。2センチメートル以下の大きさなら、良性ポリープと同じ内視鏡治療で100%完治する。

 がん細胞が粘膜下層~筋層にまで達している場合はステージ1。がん細胞が粘膜下層にとどまっているなら内視鏡治療の適応範囲だが、問題はリンパ節転移の可能性が10%あること。転移の有無は、切り取ったがんを詳細に調べるまでわからない。安全を期するなら手術も選択肢に入れておこう。

 近年開発された腹腔鏡手術は、お腹を数センチメートル切り開き、そこから腹腔鏡と手術器具を入れてがんのある腸管を切り取る術式。リンパ節郭清もできるので根治術としての効果もある。身体への負担が少なく、入院期間も10日間ほど。5年生存率は95%以上だ。