日本を凌ぐ速度で“超高齢化”が進む中国。ヘルスケアビジネスの市場拡大を見越し、日本の商社が相次いで参入している。

 伊藤忠商事は1月11日、医薬品卸の東邦ホールディングス、中国医薬品卸第3位の九州通医薬集団と設立した合弁会社の本格稼働を発表した。伊藤忠は今年度中に中国企業への資本参加や合弁会社設立を目指し、すでに複数の企業との交渉に入っているという。また住友商事も昨年12月、中国製薬会社への資本参加を明らかにした。

 伊藤忠のある幹部は「中国のヘルスケア市場の拡大速度は想定を超えている」と言う。中国の医薬品市場は現在、日本の7兆円に対し5兆円。医療機器市場は日本の2兆円に対し8000億円と半分以下だ。しかし、その成長スピードは驚異的で、今後5年間で年率20~30%の伸張が予測されている。

 背景には中国の高齢化がある。同国の65歳以上の高齢者人口は2009年末で前年比約3.2%増の1億1300万人だ。「一人っ子政策」の弊害もあり、総人口に占める割合は前年比0.2ポイント増の8.5%と急速に高齢化が進んでいる。15年の高齢者人口は日本の総人口を超えるとの試算もある。

 加えて中国は一昨年から健康保険制度を農村部へ拡大する医療改革を推進中で医療費が増大。経済発展に伴う生活習慣病の蔓延や医療の高度化もそこに拍車をかける。

 だが、日本の医薬品・医療機器メーカーの中国進出は欧米企業に比べ「大きく出遅れている」(伊藤忠幹部)。これまでは日本市場だけで収益が得られたためだが、近年、その需要も頭打ち。成長市場への参入が迫られた結果、中国ビジネスにノウハウを持つ商社の出番が急増しているのだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

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