お雑煮は全国各地でどうしてこうも違うのか?正月に食べるお雑煮。自分の食べるお雑煮はフツーだと思っていたのに、人と話してみたら、「ウチと違う」と驚いたことがある人は少なくないはず
お雑煮は全国各地でどうしてこうも違うのか?『お雑煮マニアックス』
粕谷浩子(監修)、dancyu編集部
プレジデント社
104ページ
1000円(税別)

 日本初のお雑煮のムックである。著者の粕谷浩子さんは、お雑煮が好きすぎて、各地の食べ比べレトルトパックの会社を立ち上げた情熱の人だ。その道のりは我々が想像するより、ずっと険しいものだった。お雑煮はレストランなどに無いため、粕谷さんは「地元の人と銭湯で仲良くなる作戦」などを駆使して、奥深いお雑煮の世界を丹念に調べていくしかなかったのだ。47都道府県のお雑煮を一挙に紹介した本書『お雑煮マニアックス』は、そんな努力が結実した日本の食文化史上の記念碑的作品である。

 私はイベントや出版企画をまとめる仕事をしていて、その過程で、家でゴキブリを飼育して食べる女性や、古墳が大好きなシンガーソングライターさん、鉄工所を営むかたわらエスカルゴの養殖をされている方など、多くの面白い方々とお会いしてきた。粕谷さんは、その中でも対象物に向けられた情熱のピュアさ加減が、ほんとに、ズバ抜けた人なのだ。初対面で、これは普通じゃないと私は感じた。

創業2年目で
9万個を販売

 まず驚いたのは、「中小企業診断士として創業支援センターで働いていたにもかかわらず、清水の舞台から飛び降りるつもりで会社を立ち上げました」ときいた時だ。世にも稀なるお雑煮のレトルトパックの会社である。さらに驚いたのは、百貨店でデモ販売を重ねる一方、TVなどのメディアに多数出演し、創業2年目で9万個を販売したという実行力である。現在は「岩手くるみ雑煮」など6種類を販売中だが、年内には「筑前あさくら蒸し雑煮」などが加わり10種類になる予定だという。

 代表的なものだけで100種類以上あるお雑煮だから、まだまだフロンティアは広大である。本書でも「お雑煮精進中ですから、あなたのお雑煮をぜひともぜひとも、私に教えてくださいませ!」と書いており、その情熱はとどまるところを知らない。ホームページを見ると、その夢はご当地雑煮だけで終わらない。ファーストフード化や、海外展開すら視野に入っているのだ。最初に本の概要を書くのはレビューの鉄則だが、今回は禁を犯して著者の紹介から入らせていただいた。さすがにそろそろ、本書『お雑煮マニアックス』の内容に入りたい。