関西ペイントの欧州進出、壮大計画の次なる照準はロシア石野博社長は、まさに神出鬼没だ。2016年秋のモスクワショールームの開設では、幹部でさえ現地入りをツイッターの投稿写真で知ったほど 写真提供:関西ペイント

 関西に地盤を置く、自動車用塗料で国内首位の関西ペイントは、海外M&A攻勢に余念がない。12月6日には、オーストリアのヘリオス・グループを過去最大の約700億円を投じて買収し、西洋塗料発祥の地・欧州市場への橋頭堡を築いた。

 ヘリオスは、欧州全域に10カ所以上の生産設備を持つメーカーで、工業用塗料に強みがある。顧客は、ドイツのシーメンスや、カナダのボンバルディアなどで、鉄道車両では“認証材”を保持している。

 今回、関西ペイントは、宿敵の日本ペイントホールディングスより先に塗料先進国の欧州で工場を手に入れることで、彼らの動きを封じる高等戦術を駆使した。

 さらに大きなポイントがある。ヘリオスは、中・東欧、ロシアに展開するスロベニアのメーカーが母体となっている点だ。欧州進出と同時に、旧ソ連地域に参入する布石を打ったところに地政学的な思惑が透けて見える。もう一つの狙いが、欧米の塗料メジャーでも入り込めていないロシアへ周縁国から入ることにあったからだ。

 地政学とは、地理的な条件が国家に与える影響を多面的に研究・分析する学問である。国家を関西ペイントに置き換えれば、同社の動きと妙に重なってくる──。