3月13日、損害保険業界3位の損保ジャパンと5位の日本興亜損害保険は来年春に経営統合することを発表した。一般企業の売上高に相当する正味収入保険料は合計で2兆0657億円になる(2008年三月期)。

 これにより、先に経営統合を発表した三井住友海上グループホールディングスとあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の3社の正味収入保険料の合計2兆7308億円、東京海上ホールディングスの2兆2451億円に次ぐ規模となり、三大グループの一角を占めることになった。

 もし統合しなければ、中堅損保に転落することが確実であったことから、「置いてきぼりを食わずにすんだ」という安堵の声が両社内から聞こえてくる。

 もっとも、この統合は一筋縄ではいきそうにない。問題が山積みのためだ。

 まずは、7月に発表される予定の統合比率(株式移転比率)の問題だ。上場企業同士の統合の場合、公表される直前の一定期間の時価総額が一つの目安となるのが通例だが、両社は企業規模の差とは裏腹に1月21日から日本興亜の時価総額が損保ジャパンを上回り、統合発表後の3月16日にようやく損保ジャパンが抜き返したような状況だ。

 正味収入保険料や総資産、純資産などどの指標を取っても日本興亜の約2倍の損保ジャパンだが、統合比率は、かなり不利なものにならざるをえないだろう。

 この影響は、発表された統合内容に如実に表れている。本来ならば損保ジャパンが圧倒的に有利なはずが、共同CEO体制を敷いたり、社内取締役は各社で同数を指名するなど「これほど規模が異なる会社同士の経営統合では異例」(関係者)という内容である。

 対等に近い比率になれば、損保ジャパンの株主にとって著しい株式価値の希薄化を意味し、受け入れがたいだろう。一方、社員にとっても統合後のポスト争いなど火種になりかねない。

 また、当面のあいだ対等としても、いずれ損保ジャパンが主導権を握る。となれば、強みとされる日本興亜の地方銀行とのつながりも危うくなりかねない。

 日本興亜は非財閥系であるが、三菱UFJフィナンシャル・グループと親しい間柄。親密地銀も同じ系列だ。それがみずほフィナンシャルグループと親しい損保ジャパンに取り込まれれば、銀行系列を超えてまで地銀がこれまでの関係を維持するとは考えにくい。

 なにより、「詳細が明らかになるまで方針を明確にしない」と表明しているとおり、両社の筆頭株主である米投資ファンド、サウスイースタンはこの統合を手放しで喜んではいない。

 再編に乗り遅れまいと妥協した結果の統合では、将来に禍根を残すことにもなりかねない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  藤田章夫)