2016年12月に成立したカジノ法に関し、マイナンバーを利用した入場規制や、生活保護受給者の入場禁止が検討され始めている。しかし、そもそもカジノの採算は何を前提としているのか。日本に有効なギャンブル依存症対策はあるのか。根本からの再考が必要となりそうだ。(フリーランスライター みわよしこ)

カジノ解禁で生活保護受給者を
縛る前に考えるべきこと

生活保護受給者ばかりを狙い撃ちするカジノ法議論の本末転倒昨年末に成立したカジノ法に関し、生活保護受給者の入場禁止が検討され始めている。しかし、そもそも日本でカジノは採算がとれるのか。有効なギャンブル依存症対策はあるのか。規制の前に根本からの再考が必要ではないか

 明けたばかりの本年2017年は、生活保護制度に大きな変化が訪れる年となるかもしれない。ほとんど報道されていないが、2017年には生活保護法の再度の改正、および生活保護基準の見直しが予定されている(2016年3月 厚生労働省 社会・援護局関係主管課長会議資料PDF13ページ)。

 2017年には、2016年12月に成立した「カジノ法」こと統合リゾート(IR)推進法(連載第74回参照)を具体化する実施法が成立する可能性もある。日本維新の会は、カジノ法を受け、生活保護受給者のギャンブル・風俗・totoくじを禁止する法案を国会に提出している(日本維新の会:目指せ法案100本提出)。ギャンブルに関心のない私は「カジノをつくるのをやめれば、そんな人権侵害はしなくて済むのに」と思わずにいられない。そもそもカジノは、なぜ日本に必要なのだろうか。

 カジノ法制化・誘致に関するポータルサイト「カジノIRジャパン」の「みんなのIR・カジノ Q&A」によると、日本の観光業は潜在力が極めて高く、カジノを含む統合リゾートは「国家の戦略的な国際観光政策の有力な手段」であり、「魅力的な観光地の形成」が可能になり、「それに伴って地域経済を活性化」できるということだ。

 また、政府が2030年までに見込んでいる訪日外国人観光客は、2015年から2020年までに2000万人、2020年から2030年までに1000万人、合計3000万人であるという(Q7)。統合リゾートによる効果のうち最大のものは、施設やインフラの建設・整備、直接間接の雇用創出、国内外の観光客増加、カジノ収益による地域活性化であるという(Q8)。

 確かに、大型高級リゾート地にだけカジノがあり、比較的富裕な外国人観光客が客の大半を占め、金離れよく遊び、特にカジノで大きな消費を行ってくれるというのであれば、日本人一般にとって、害より益のほうが大きい話になるかもしれない。