「木賃ベルト地帯」という言葉は今や昔の感もあるが、民営借家の割合は今も23区中トップ、木造共同住宅の割合も2位と言うから、中野区は借家王国だ。新宿に近く便利な上に、物件も豊富。だから、20代の割合が23区で一番多いのもうなずける。

 同時に中野区は、地域社会の骨格が戦前に形成された、成熟した街でもある。若者の流動性と成熟した地域社会の持つ定着性、この相反する2つの状況のなかに、中野区の商店街の今日があり、明日がある。

食料品店が悪戦苦闘している理由は
若者が多い「木賃ベルト」の名残り?

 中野区内の商店街数は80余、1k㎡当たりの商店街数は5位と、商店街の集積密度は高い。しかし、販売力の方は見劣りがする。人口1人当たりの小売販売額は、中野区全体では12位と中位にあるものの、専門店は18位、食料品専門店に限ると最下位に落ち込んでしまう。

 食料品店について、もう少し詳しく見てみよう。肉屋は10位と健闘しているが、八百屋は17位、魚屋と惣菜屋は共に最下位である。

中野区の商店街――コンビニが頭打ちの“若者の街”で始まった、商店街の「巻き返し大作戦」

 では食品スーパーが元気かと言うと、そうでもない。食品スーパーの人口1人当たりの販売額は15位と、決して高くない。

 これらのデータは、若者の区という特徴を強く反映している。食事は外食が中心の若者は、そもそも食料品の買い物需要自体が小さい。ましてや、商店街での買い物となるとなおさらだろう。

 魚屋の1人当たりの販売額が最下位というのは、いかにも若者の区らしい。鮮魚とは、若者が最も買いそうにない商品である。惣菜屋の最下位は少し意味が異なり、こちらの需要はある。だが、それを一手に引き受けているのはコンビニに違いない。