P.F.ドラッカーの生き方をお手本に、自分の人生を充実させる方法を学ぶ。そのポイントは「トータルライフ」にあった。ドラッカーに多くのインタビューを行い、『ドラッカーに学ぶ自分の可能性を最大限に引き出す方法』(日本語版)を上梓したジャーナリスト、ブルース・ローゼンステイン氏に聞いた。(インタビュー/翻訳者・井坂康志)

パラレルキャリアに時間を振り向けよう
人生のある局面で挫折しても、それ以外の領域でカバーできる

――著書の冒頭で述べられている「いくつもの世界を生きる」とはどんな意味ですか。その際のポイントは何ですか。

ドラッカーの人生論の鍵は多様化<br />自分でも知らなかった自分に出会うには<br />一歩外に踏み出すことだブルース・ローゼンステイン/フリーで活躍するジャーナリスト。米国の大手紙『USAトゥデイ』記者を長年務めるかたわら、リサーチ、司書、講演家、ビジネス書評などで活躍。早くからセカンドキャリアの形成と世界を広げる人生指針を実践してきた。アメリカン大学卒業後、アメリカ・カトリック大学図書館情報学修士を取得。本業での勤務と共に、教会活動、NPOなどで多様な技能と人脈を築く。現在、アメリカ・カトリック大学図書館情報学部でも教鞭を執る。 『USAトゥデイ』以外にもさまざまな新聞・雑誌に寄稿。ドラッカーの人生哲学に深い造詣を持ち、20年にわたり独自の研究活動を展開してきた。ドラッカー自身へのインタビューのほか、『インフォメーション・アウトルック』誌にドラッカーに関する連載コラムを2001年から2002年まで執筆。ドラッカーが没する7カ月前にもインタビューを行った。

 人生の多様な側面にあえて目を向けることです。意識して会社の外の世界、未知の世界に自らの世界を見出すことです。仕事にはしかるべき時間を使えるでしょう。ならばそこから進んで、音楽や絵画といったもう一つの世界にも時間を振り向けてみればいいのです。

 フルタイムを使う必要はありません。何か別の世界の活動に最初はほんの少しでいいから時間を費やしてみることです。そこを起点に違う世界の人たちと接することです。そうすることで、一つの世界にしがみつかずに自由に生きられるようになります。

 仕事で得られない満足も得られます。音楽とか絵の世界でもいいし、外で誰かに教えてみるのもいい。パラレルキャリア(もう一つの仕事)を展開してみることです。挫折なき人生などありません。パラレルキャリアを持つことで、人生のある局面で挫折しても、それ以外の領域で強みを発揮したり、支援を得ることができます。

――パラレルキャリアについて、実行したいと考えている日本の読者もたくさんいると思います。

 実りある生を送る上で、パラレルキャリアはドラッカーさんの第二の人生論の鍵といっていいと思います。日本の皆さんも、本業で活躍しつつ、他方で教えたり書いたり組織を立ち上げたりと、もう一つの活動を見出されるとよいと思います。

 その場合、真っ先に頭を悩ませるのが時間の問題です。しかし、パラレルキャリアとはいずれ本業に転化する可能性を常に秘めたものです。とりあえず何とか時間を捻出して、まずは小さくはじめてみることです。そこで自分が何をしたいか、何に向いているかなどを見てみればいいでしょう。

 仮に気に入らなかったりしっくりこなくても、失うものなど何もありません。むしろ、自分でも知ることのなかった自分に出会うまたとない機会となるのは請け合いです。