「仕事が進まない」「今日も残業だ」「結果が出ない」……こうした問題を、すっきり解決してくれる手法がある。PDCAを超スピードで回す「高速PDCA」だ。ソフトバンクでは6万人超の社員がこの手法を使い、わずか30数年で8兆円企業を誕生させた。
「高速PDCA」はただ仕事の質とスピードを高めてくれるだけでなく、人の成長も高速化させてくれる。それは5つの力が身につくからだ。
前回に続き、9年にわたり孫社長の右腕として活躍した元ソフトバンク社長室長・三木雄信氏の話題の本『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』から一部抜粋して紹介する。

ムダのない仕事をする方法とは?

「80:20の法則」を聞いたことはあるでしょうか。

「全体の大部分(80%)は、一部の要素(20%)によって決まる」というもので、別名「パレートの法則」としても知られます。もともとは経済学者が発見した法則で、現在ではビジネスの世界でも幅広く活用されています。

「売上の80%は、上位20%の商品によって生み出される」「従業員100名の会社の売上の80%は、20名の社員によって生み出される」といった事例は有名です。

 これを個人の仕事に当てはめると、「仕事の問題の80%は、仕事全体の20%のことが原因」となります。要するに、「仕事全体の20%がうまくいくようにすれば、全体の80%の問題が解決する」ということです。

 実は、高速PDCAを回すと、自分の仕事にも「80:20の法則」が見えてきます。

 営業マンなら「自分の売上の80%は、20%のお客さまによって生み出されている」という法則が成り立つ可能性があります。

 過去の結果を分析することで、「ここ3ヵ月の売上の80%は、IT業界とインバウンドの旅行業者によって生み出されている」と判明したら、その2つの業界に集中して営業をかければ、もっと効率よく売上を伸ばせるかもしれません。

 仕事で高い成果を上げるためには、成果が上がらない仕事は後回しにして、確実に成果が上がることに集中するしかありません。

 そのためには、常に自分の仕事を数字で検証し、仕事の優先順位付けをして、高い成果が上がるものから実行することです。

 仕事をしている中で、こんなふうに思ったことはないでしょうか。

「今、何のためにこの仕事をしているんだっけ?」

 こう思ってしまうのは、まさに今何のために仕事をしているかわかっていないからです。それは目的がはっきりしていないから、その仕事の意味合いがわかっていないから……といろいろな理由がありますが、根本的な原因は、仕事の優先順位がわかっていないことです。

 優先順位がわかっていないということは、仕事にムダがあり、何をすれば仕事で成果が出るのかがわかっていない状態です。

 ソフトバンクでは、数字で物事を管理するとお伝えしました。この数字で管理することで、ある仕事が目標達成にどう関係しているのかが見えてきます。

 それがわかれば、その仕事を今やる必要があるのか、実はほかに成果に直結する仕事があるのではないか。この仕事のこの部分はムダかもしれない。そうしたことがわかってきます。

 すると、仕事の「(3)ムダがなくなる」わけです。

 1つひとつのプロセスを数字で管理していくことで、自分の仕事が「見える化」され、優先順位も見えてくる。成果に直結する行動を社員がとれば、組織のムダがなくなり、成長スピードは当然速くなります。