“モノが売れない時代”と言われるようになってから、どれほどの月日が経っただろうか。たとえモノが売れない時代であっても、企業が生き残り、さらに成長していくためには、何か新しい売り物を創る以外に、選択の余地はない。そんな中、新たな活路のひとつとして見出されたのが、昨今、何かと注目を集めているIoTだ。

 IoTの前身であるM2M(Machine to Machine)の時代から、モノとモノをつなぐ回線サービスを提供してきたKDDI。ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏に、モノとインターネットが繋がることによって生まれる本質的な変化について、話を聞いた。

IoTで何が変わる?
見逃せない2つの変化

 KDDIのIoTの歴史は古い。2001年に誕生した、位置情報を活用したセコムの見守りサービス「ココセコム」に始まり、2002年のトヨタ自動車「G-BOOK」、2015年のミサワホームの“家のIoT”「GAINET」など、多くの企業とコラボレーションしながら、多数の実績を積み上げてきた。KDDIの法人向けM2M/IoT回線の契約数は、この15年間で飛躍的な伸びを見せており、今後も高い水準で、この傾向は続いていくと見られている。

 2025年にはネットワークに繋がったモノが500億個を超えるとの見方も出る中で、IoTはどのような領域で拡大しているのだろうか。

「まず現時点で拡大中なのは、電力のスマートメーターです。当社の契約数が大きく伸びている大きな要因になっています。乗用車・商用車・建設機械や、エネルギーマネジメントの領域も非常に伸びていますね。堅実成長しているのは、物流やサイネージ、医療や警備など、幅広い業界で活用されている“組み込みソリューション”の領域です。コンシューマデバイスの領域も間違いなく増えてくると思いますが、B2Bよりも少し遅れて来るのではないかと予測しています」と原田氏は説く。

KDDI株式会社 ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏

 このようにあらゆるものがネットワークに繋がるIoT時代に入り、企業経営の視点において見逃せない、大きな2つの変化が起きているという。

 1つは、業種を超えた企業同士の連携が加速している点だ。発注者・受注者という単なる主従関係ではなく、互いに足りないところを補完しあう“パートナー”になるのだ。テクノロジーの最先端にいるスタートアップと大企業が手を組むことも珍しくなく、ここにおいて企業の大小はまったく関係がない。

 もう1つは、B2B企業であっても、これまでの課題解決の手段を売っていた時代から、一般消費者の顧客体験価値を売る時代になったという点である。

「自戒の念を込めて言うと、IoT時代に入る以前のKDDIも、目の前のお客さまだけしか見ておらず、ネットワークやサーバといった手段を売るだけのビジネスに留まっていました。しかし、IoTによって、お客さま(企業)が提供するサービスを通じて、その先にいる一般のお客さま(消費者)のところまで繋がることができるのです。我々が向き合わなければならないのは、一般のお客さまの顧客体験価値の最大化であり、それを実現することによって、結果的にお客さま企業の売上拡大と収益力向上を図ることができると信じています」(原田氏)