前回お話した通り、先進国に住む私たちは、おそらく人類史上初めての飽食を経験しています。しかし、現在のような飽食、つまり、ありあまる食料に囲まれた生活はそう長くは続かないと考えられます。飢餓を経験することになるかどうかまではわかりませんが、食料が不足し、価格が高騰することは間違いないでしょう。しかも、それはかなり近い将来起きそうです。

 世界の人口は年間に約8千万人も増加しています。これは一日にすると約22万人。つまり、明日の夕食は、今日の夕食よりも22万人分多く準備する必要があるのです。

 しかし、もっと大きな要因があります。例えばお隣の中国は、一人っ子政策の効果もあり、人口増加率は平均年0.48%と世界平均の半分以下です。ところが、1994年頃まで大豆の純輸出国であった中国は、今では5030万トン(2009年)と、日本の17倍もの大豆を輸入しています。

 もちろん、中国の人々が大豆を大量に食べるようになったということではありません。所得が向上したことによって、肉や乳製品の消費量が増え、家畜を養うためのエサとしての大豆の消費が急速に増えたのです。

 人間が1キロの穀物を食べるのには、1キロの穀物があればいいのですが、1キログラムの鶏肉を作るのには4キロの穀物が必要です。豚であれば6キロ、牛の場合にはなんと11キロもの穀物が必要になります。肉を食べるようになると、より多くの穀物が必要になるのです。

 人口は年1.2%(世界平均)でしか増加しないとしても、経済的に豊かになればなるほど、私たちが必要とする食料の量は急速に増大するのです。拡大を続ける人間の胃袋を、地球はどこまで支え続けることができるのでしょうか。

 供給側の状況はどうでしょうか? 地球上の土地面積は限られており、耕作地を増やすことは困難になっています。それだけではなく、バイオ燃料を作るエネルギー作物の栽培のため、食料を生産する耕作地は減ってしまう可能性すらあります。今や世界的には、耕作地の争奪戦が起きているほどです。