ヨーロッパでは、ユリウス暦という暦法があるように、ユリウス・シーザーの時代、つまり紀元前から太陽暦が普及していたが、アジア、とくに日本を含め東アジアでは、近代に至るまで月の公転する周期に基づいた太陰暦がベースであった。

 なので、日本では月にまつわる言葉が非常に多い。いまだに「睦月」「如月」「弥生」「卯月」……、と続く月の別名が、新暦になって季節感があわないにもかかわらずつかわれているのも、日本人の心の奥底に、月に対する郷愁が存続し続けているからである。

月の満ち欠けと一緒に時を辿る <br />A.ランゲ&ゾーネ「サクソニア ムーンフェイズ 」

 ただ、約50年前にアメリカのアポロ計画によって、人類が月面に到達したにもかかわらず、月は洋の東西を問わず、現代でも神秘的である。それは地球に最も近い天体なのだが、現代の科学をもってしても、さまざまなことがまだ現実的に解明されていないということに起因しているのかもしれない。

 確実にわかっているのは、月の満ち欠けが一巡する朔望月の平均値が29日12時間44分3秒であること。

「サクソニア ムーンフェイズ」は、その満ち欠けを正確かつ優雅に表現する。それは、このムーンフェイズの表示が、月そのものと同期するように動き続けているから。緻密に設計された7つの歯車からなる輪列によって、新月から次の新月までの期間を99.998%の精度で再現するのである。

 ムーンディスクの濃いブルーは、特許を取得した特別なコーティングによるもの。その表面に輝く852個の星は、レーザー光線でコーティング層を切り取ってゴールドを浮かび上がらせており、とても美しく煌めいている。このロマンチックな光景が、腕元でおこなわれるのである。

 もちろん、この“ムーンフェイズ”が表現する月の満ち欠けは、ただロマンチックなだけでなく、実用的でもある。月の重力は地球に影響を及ぼし、潮の満ち引きを起こす。潮汐変化は、海に関わる人たちにとっては大きな環境変化なのである。

 漁師は、海水面が高いか低いかによってどういう漁をするかの判断をしなければならないし、海岸近くを航行する船は、潮の満ち引きを考慮していないと座礁してしまう。

 四方を海で囲まれた日本にとって、月の満ち欠けは、ロマンの対象でもあり、生活を左右する実用でもあったのだ。そんなことを考えながら「サクソニア ムーンフェイズ」を見ていると、このモデルの存在がとても大きいものに思えてきた。

月の満ち欠けと一緒に時を辿る <br />A.ランゲ&ゾーネ「サクソニア ムーンフェイズ 」

A.ランゲ&ゾーネ
サクソニア ムーンフェイズ
自動巻き、18KWGケース、40㎜径 313万円(税抜)
問/A.ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080