朝鮮半島は危機的状況、「安定政権」日本が果たせる役割

 東アジア情勢は緊迫の度を加えてきた。北朝鮮は3月6日に4発のミサイルを日本海に向けて発射し、日本の米軍基地を標的とした実験であることを匂わせた。2月13日のマレーシアでの金正男暗殺事件は北朝鮮の関与が濃厚である。

 一方韓国では3月9日に朴大統領の弾劾が決定され大統領選挙が60日以内に行われる。在韓米軍へのTHAADの配備が始まるとともに、米韓合同軍事演習が3月1日から2ヵ月間実施されている。中国では国会にあたる全国人民代表大会が15日閉幕し、秋の党大会に向けて政治の季節の幕開けである。トランプ政権の東アジア政策は未だ不透明であるが、ティラーソン国務長官は15日からの日本を皮切りに、日韓中の三ヵ国を訪問する。日本はどう情勢を認識し、どういう戦略を構築していくべきなのか。

緊迫の度合いを増す東アジア情勢
北、2、3年で長距離弾道ミサイル?

 北朝鮮脅威認識は二つの面から高まり、朝鮮半島は新たな危機的段階に達している。

 第一に、金正恩政権は衝動的行動が目に付く。金正日時代の「先軍体制」(国権の最高機関が軍人を中心とする国防委員会)から党中心体制(最高機関が党国務委員会)へと変化し、権力基盤を固めるため金正恩政権は大々的な粛清を行い、不満分子の排除にかかっている。異母兄の金正男の存在も体制を脅かすと考えたのであろうか。しかし結果的に体制の安定度が増しているとは考えにくい。実力を持った軍が潜在的な不満分子(先軍体制時代の特権は取り上げられているのだろう)であることは不安定要因なのだろう。

 第二に、北朝鮮の核ミサイル開発は武器としての精度を相当に高めてきた。ミサイルも短距離、中距離、長距離のミサイル・弾道ミサイルや潜水艦発射ミサイルまで多様な実験を繰り返してきた。2000年代は核・ミサイル実験を西側から支援を得るための政治的カードとして使った面が強かったが、今や武器としての精度を上げるという観点が濃厚である。この2、3年のうちに核弾頭搭載の長距離弾道ミサイルが完成するのではないか。