不動産の購入や売却で失敗しないためには、信頼できる不動産仲介会社や営業担当者を選ぶ必要がある。そのためにはどのような点に注意すればよいのだろうか。不動産取引の実務に精通する不動産コンサルタント・平野雅之氏に聞いた。

リックスブレイン代表
不動産コンサルタント
平野雅之氏

 戸建て住宅や土地、マンションなどを売買するときは、不動産(仲介)会社による的確なサポートが欠かせない。そのときに重要になるのは、信頼できる業者に出合えるかどうかだ。平野雅之氏によれば、中古住宅を検討するとき、特にそれが重要になるという。

 「同じ免許制度の下で営業しているとはいえ、専門性や取り扱い業務は会社によって大きく異なります。例えば売買に関しては、賃貸物件の仲介が中心の不動産会社より、売買を中心にした不動産会社を選択するのがよいと思います。特に戸建ての場合、それが重要になってきます」

 と平野氏はアドバイスする。というのは中古住宅は新築の分譲住宅などと違い、売買契約で複雑な要素が絡むからだ。例えば、敷地境界や地下を含めた構造物の問題、役所の台帳と現況で道路幅に相違があるなどの問題、隣地や私道など土地の権利関係の問題、あるいは建物自体の問題や隣地とのトラブルなどなど。そうした問題点を事前に調べ上げ、トラブルが生じないように売買契約をまとめるには、ある程度の取引の経験と知識が必要になるのだ。

提示される売却価格の根拠と
売り方を尋ねること

 では実際に家を売却するときに、どのような不動産会社を信頼するべきなのか。その前にまず、売り主は不動産会社の媒介(仲介)業務の流れを理解しておく必要がある。

 大まかな流れはこうだ。売り主から依頼を受けた不動産会社は、その物件に関する情報をレインズ(REINS)と呼ばれる業者間の物件情報ネットワークシステム(指定流通機構)に登録する。この情報を基に、別の不動産会社も買い主を見つけようと営業活動を進めることになる。つまり売り主から依頼を受けた不動産会社が、必ずしも買い主を見つけてくれるわけではない。売買には基本的に二つの仲介業者が介在する。だからこそ売却成功のためには、売り主の窓口となって、誠実に適正な値付けをしてくれる不動産仲介会社が求められる。

 例えば、売却に当たって3社に査定を依頼したとする。実際に5000万円で売却できる物件の場合、A社は5000万円、B社は手堅く4800万円を提示する。ところがC社は、売却の依頼を取得したいために、6000万円で売却できると主張する。売り主は少しでも高く売りたいのでC社を選択するが、実際に売りに出しても買い手が付かず、結局価格を下げて売却することになる、そのようなケースも少なくないという。

 「大切なのは、売却できるという価格の根拠をきちんと説明してもらうこと。さらにどのように売り出すのか、その方法を尋ねること。レインズに登録するだけなのか、他のサイトやチラシなどの広告を使うのか、オープンハウスなどを企画して買い主を募集するのか。その地域の住宅特性に精通して適正な値付けができる業者、そして提示される価格に惑わされないことが、不動産会社を見極める重要なポイントになります」

※「レインズ」とは、Real Estate Information Network Systemの略称。国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構がコンピュータ・ネットワーク・システムを運営している。指定流通機構の会員不動産会社が情報を提供したり受け取ったりできる。