テキーラが米国で「高級酒」になれた理由

ウォッカ、ジン、ラムに並ぶ四大スピリッツとして、近年注目を集めるテキーラ。その中でも、最高級のウルトラ・プレミアム・テキーラとしてトップブランドに君臨するのが、日本ではバカルディジャパンが販売する「パトロン」だ。しかし、日本ではいまだなじみが薄く、“安く手っ取り早く酔えるお酒”といった印象が強いテキーラ。日本での戦略をパトロン社のリーCMOが語った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)

──日本人にとって、まだまだなじみが薄いテキーラですが、海外ではどれくらい人気があるのでしょうか。

 テキーラの最大消費国の米国ですが、もはや文化の一部と言っていいくらい生活に浸透しています。バーや飲食店、自宅にすらテキーラはありますし、オリジナルのカクテルもどんどん作られています。米国だけではなく、例えば、イギリスやスペイン、フランス、オーストラリアなどでもテキーラの人気は爆発していますね。

 ただ、28年前に我々がパトロンを立ち上げ、最高級カテゴリーであるウルトラ・プレミアム・カテゴリーを作ったときは、米国でさえもテキーラの位置づけは今の日本と同様で、“悪酔いするお酒”というイメージがどうしても強いものでした。しかし、その後の発展を見れば、いま知名度が低い日本の市場でも十分に拡大していけるのではないかと期待しています。

──テキーラがそうした地域で普及した理由はなんでしょうか。

 いくつかありますが、大きいのは“カクテル文化”の存在です。つまり、新しいカクテルの創作に意欲的な新しいもの好きの若い人たちというのがいて、テキーラはそういう人たちの関心をうまく取り込めました。

 テキーラというのは、実は多様性のあるスピリッツなのです。例えば、熟成させていないシルバーはカクテルにとても向いておりますし、1年以上熟成させたアネホはロックで飲むなど、ウィスキーとしっかり競合できる味わいです。食事に応じて飲み方を変えることもできる点では、まるでワインのような存在とも言えます。

 テキーラの持つ多様性と、それを引き出し斬新なカクテルを生み出そうとする人たちによって、テキーラは広く普及しました。