人は「納得する」のは好きですが「説得」されるのは嫌いです。ところが多くの人は、聞き手を説得しようとして失敗します。聞き手が納得してくれるような話し方のコツを集めた本『なぜあの人の話に納得してしまうのか[新版]』の中から、納得してもらうための話し方のコツを紹介いたします。

説得力のある人は
説得するのではなく、
納得するお手伝いをする。

 人に、納得してもらうのは、それほど難しいことではありません。

 人間にとって、納得することは快感だからです。「納得できない」というのは、不快なのです。納得するのは好きですが、説得されるのは嫌いです。

 聞き手を納得させることのできない人は、なんとか力ずくで、聞き手を説得しようとしてしまうから失敗するのです。

 説得は、難しい。でも、納得なら、簡単。

 話し手は、聞き手が納得するお手伝いをすればいいのです。聞き手を力で引っ張るのではなく、聞き手の背中を支え、軽く押してあげるだけでいいのです。

 あなたの得意な料理は何ですか?

 では、その料理の仕方を説明してください。

 料理の仕方の説明を聞けば、その人の説得力がどれくらいあるかわかります。

 私は、料理が好きです。私の父親も、料理を作るのが好きです。テレビの料理番組に出る時など、料理の作り方を、電話で父親に聞いたりします。

 その時、父親は、必ずこういう教え方をしてくれます。

 「簡単じゃ。Aして、Bして、Cするだけでええんや。ただな、Dだけに、気をつけたらええんや。簡単じゃ」

簡単だと、最初に言う。

 ここに、人を納得させるための、話し方の基本がすべてこめられています。

 ①まず、簡単であることを、聞き手に伝える。

 聞き手は、簡単であると聞いて安心します。

 「ちょっと、難しいけどね」と言われると、聞き手は、話を聞きたくなくなります。

 語尾も「…しなければならない」ではなく、「…するだけでいい」と言うのです。

 説得力のない人ほど、「…しないとダメ」という言い方が多いのです。

 ②ポイントは、3つだけ伝える。

 4つ以上になると、もう伝わりません。

 3つのそれぞれの一つ一つも、簡略にまとめる必要があります。

 聞き手の頭を整理する前に、あなた自身の頭を整理することが必要なのです。

 ③注意は、1つだけ付け加える。

 説得力のない人は、最初から最後まで、注意だらけです。

 注意は、1つだけだから、印象に残るのです。

 注意された後は、聞き手は、「大丈夫かな」と自信をなくしますから、そこでもうひと言「簡単ですよ」というひと言を添えるのです。