人は変われる。初めは凡庸な試作品しか作れなかった菓子事業者たちも、ようやく本気スイッチが入り、ついに皆が納得する土産菓子の姿が見えた
しかし、新商品開発は中身ができて終わり、ではない。ネーミング、パッケージ、製造や流通と課題は山積。ドタバタ町おこしの試行錯誤は続く。

 満場一致で採用が決まった創作和菓子「拝みもなか」と「へんろの小石」は、味の絶妙なバランスを目指し、また、菓子事業者全員が製造できるよう、技術やノウハウを共有しながら改良が進められた。

 そんな中、大きな問題が残っていた。ネーミングとパッケージである。

 パッケージは商品の売れ行きを大きく左右する。これまでの会合でも、土産物屋のメンバーから「とにかく包装を重視してくれ」と言われており、「中身は二の次」という極端な意見すら出ていた。

 たしかに、観光土産と言えば、人気キャラクターや名前が派手に印刷された「目立ってなんぼ」のものが多い。

 しかし今回は、お遍路を終えた感動を、土産を渡した相手と分かち合う、結願をつなぐことを目指している。そうした想いが伝わるパッケージにしたかった。

 ただし、予算も時間も限られている。表現、伝わり方、デザイン…すべてにおいて発想の転換が必要だった。

すべて自前でやれる能力はない。ならば、どうする?

 そこで東京に帰り、知人のクリエイティブ専門家に協力を仰ぐことにした。実力ある方々にもかかわらず、それに見合った予算はない。正直、断られても仕方なく、「当たって砕けろ」という気持ちだった。

 しかし、ありがたいことに、この町おこしの志に共感してくれ、ボランティア同然で協力してくれることになった。そのときの感謝の気持ちは、筆舌に尽くしがたい。

 ともあれ、商品開発力をつけることが目的の町おこしプロジェクトでありながら、あえて東京の専門家に声をかけたのには、理由があった。