英国はEUを離脱して初めて移民の貢献を思い知ることになる

「EU離脱」を選択した英国人はどのような未来を思い描いたのだろうか。6月8日にはBrexitへの国民の支持を事実上改めて問う下院総選挙が実施されることになったが、離脱の最大の理由になった移民が、英経済の成長や財政収入に貢献していることがわかってきた。メイ首相は、「英国民の英国民による英国民のための」政治を取り戻し、その先により強い英国の姿を見ているのだろう。しかし、実際はその道は「高インフレ」「低生産性」「低成長」に阻まれた、長く険しいものになるように見えてならない。

移民は財政にも貢献していた
給付を受ける額より納税額多い

 英国民がEU離脱を選択した最大の理由が移民問題だ。実際、英国への移民純流入は増加傾向にあり、全人口に占める割合は2015年に13%を超えた。近年の純流入の半分はEU出身者であり、特に2004年、そして2014年、それぞれポーランドやハンガリーといった中東欧8ヵ国、そしてブルガリア、ルーマニアの2ヵ国がEU域内で就労可能となった年に、EU出身者の英国への流入が加速した。

「人」の移動の自由を条件とするEUの加盟国である以上、英国はEUからの移民流入を基本的に拒むことはできない。しかし、英国ではEUからの移民に「ベネフィット・ツーリズム」(社会保障受給を目的とした移民)という批判が聞かれる。

 英国は財政再建の道半ばであり、間接税(VAT)や年金受給年齢の引き上げなどの措置を講じてきた。緊縮財政の痛みをる。英国民が負担していた中で、移民への社会保障給付が政治問題となったのは自然でもある。