サラリーマンの永年の夢・マイホーム
持ち家率は2009年にピークアウト

 サラリーマンの永年の夢が「マイホームの取得」だったとすると、持ち家率の上昇はその実現度を表す指標と言えよう。しかし、その豊かさ指標は、3年前から低下方向に転じている。

 ピークの持ち家率は、2008年春の82.0%であり、それが2009年にはピークアウトして、2011年は78%台になろうとしている(図表1参照)。なぜ、持ち家率は低下してしまっているのだろうか。

朽ちゆく住宅資産への警鐘<br />~低下に転じている持家率の背景<br />――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

 自然に考えると、持ち家率は上昇するだけの数字に思える。一度取得した住宅は、誰も手放すことがなければ、持ち家の普及率は上昇するだけである。その数字が下がるということは、きっと背後に大きな変化が生じているのだろう。

 そこで、背景を調べるために、年代別にセグメント分析をしてみた。すると、意外なことに、30歳代以下の世帯主年齢では、住宅取得が若い時期から進んでいることがわかった(図表2参照)。

朽ちゆく住宅資産への警鐘<br />~低下に転じている持家率の背景<br />――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

 これは、住宅ローン金利の低下や、若い人でも購入できる低価格マンションが多く供給されるようになったことがある。一方、持ち家率を引き下げているのは、40~54歳までの年齢層である。

 では、どうして中高年層は、最近になって持ち家を取得しなくなっているのであろうか。この点は、推察しかないが、若い時期に住宅取得のタイミングを逸すると、中高年になってからは昔よりも住宅取得がしにくくなったことがあろう。