「百貨店とスーパー」の数字で語られる消費統計と報道の歪み

最近、企業の経営者を取材して「景気の動向」を訪ねると必ず戻ってくるのが「まだ、消費がよくなっていないからね」という言葉。消費がよくなっていないから、雇用者数は増えても景気に反映されていないという論調だ。しかし、消費は本当に悪いのだろうか。企業の経営者の多くは政府が発表している統計を「拠り所」にして消費の動向を見ている。その集計の仕方に問題はないのか。旧態依然としていないか。疑問点はあまりにも多い。(流通ジャーナリスト 森山真二)

百貨店やスーパーの売上高を見ても
消費の実態はわからない

 イオンの岡田元也社長は「百貨店やスーパーなどという業態の数字を見ても、これでは本当の消費の実態は分からない」と話す。

 例えば百貨店。ピークの1991年の9兆7130億円以降、業界全体の売上高は減り続けており、2,016年には5兆9780億円と、ついに6兆円を割り込んだ。スーパー、コンビニエンスストア業界の売上高にはとうに抜かれ、さらに最近ではドラッグストアの15年売上高である6兆1325億円(日本チェーンドラッグストア協会調べ)にも負けている。

 百貨店が高額品から食料品まで、買回り品から最寄り品まで幅広い商品を扱うという特性があり、統計採用に都合がよかったにしても、この市場規模で本当に消費の指標になるのか、極めて疑わしいのである。

 実際、日本百貨店協会の近内哲也専務理事は「これ以上縮小すると、(百貨店としての)成立が難しくなる」と話しているが、それ以前に消費市場全体に占める百貨店の割合も縮小している今、景気指標の一つとして統計採用の意味が希薄化しているのである。